「海蝶 鎮魂のダイブ」 吉川英梨著

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 主人公は、日本でただ1人の海上保安庁女性潜水士・忍海愛。愛には東日本大震災で母を失い、自身も命を失いかけた過去があった。

 震災から11年後、愛は震災時に自分を助けてくれた海上保安署の隊員・佐崎純平と再会する。彼は海保を辞め、レストラン船の1等航海士として仙台で働いていた。自然と付き合い始めたふたりだったが、やがて愛は佐崎が海保を辞めたのは震災の影響でPTSDになったためだったということがわかり動揺する。

 デートを重ねるうちに愛は自分と会うことで彼の心の傷が刺激されていること、さらに彼がレストラン船の仕事も辞めてしまったことを知る。話し合うために休みをとってふたりで船旅に出かけたところ、乗客として乗り込んだ大型フェリーで有毒ガスが発生し窮地に追い込まれる……。

 本書は女性潜水士を主人公とする海蝶シリーズ第2弾。決して忘れられない震災の傷を抱えた主人公が、乗客乗員687人を乗せたフェリーの命運を握ることになるスリリングなストーリー。時がたっても拭えないつらい思いをなんとか乗り越えようとする人々の姿を真摯に描いている。

(講談社 1870円)

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