今の時代が見えてくる 最新現代小説特集

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「タクジョ!」小野寺史宜著

 思ってもみなかったことが次々と起こる今の時代、ありとあらゆる人々が今までになかったさまざまな事象を目にしている。今回は、新卒タクシードライバー、東日本大震災を経験した女性潜水士、ひきこもり少年など、今の時代を切り取った現代小説5冊をご紹介!

◇

 主人公は、大学を卒業してすぐタクシー運転手になった高間夏子。新卒の女性ドライバーとあって珍しがられたものの、運転が好きだったことと、女性が安心して利用できるように女性ドライバーが増えた方がいいと思っていたこともあり、自然に選んだ道だった。

 いざ路上に出てみると、客にナンパされたり、深夜帯に不自然な場所で停止を求められ強盗かと身構えたりと、さまざまな事件が起こる。

 そんなとき、ある誠実な男性と出会い意気投合して付き合うことになったのだが、夏子は結婚を前提に考えたいという彼から、できればタクシーの仕事を辞めてもらえないかと頼まれる……。

 女性タクシードライバー「タクジョ」の世界を描いたお仕事小説。女性が少ない業界で自分の仕事を見つけようと試みる若き主人公の素直な姿がまぶしい。

(実業之日本社 1700円+税)

「海蝶」吉川英梨著

 女性初の潜水士として横浜海上保安部でデビューすることになった忍海愛は、現役最年長の記録を持つ潜水士の父・正義と、特殊救難隊の現役隊員で長官表彰された同じく潜水士の兄・仁を持つ、いわば潜水界のサラブレッド。マスコミから過度な注目を浴びつつも、父と兄から潜水士になることを反対されており、早くやめろと言われていた。

 厳しい世界で他の潜水士のお荷物になることを危惧しただけでなく、愛には東日本大震災の津波で母親を失ったつらい記憶もあったからだ。そんな折、八丈島沖で海難事故が発生したという一報が入った……。

「新東京水上警察」シリーズや、「女性秘匿捜査官・原麻希」シリーズで人気の著者による最新作で、東日本大震災で運命が変わった家族の物語。救助の世界に飛び込んだ主人公の挑戦が胸を打つ。

(講談社 1600円+税)

「獣たちのコロシアム」石田衣良著

 主人公マコトの仲間・通称サルがタピオカミルクティーの店「夏水堂」を始めた。若いイケメンをバイトに雇い、行列ができる店になったのだが、ある日大企業に勤める中年男性・大前がバイトに応募してくる。戸惑ったサルは、マコトに意見を求めた。

 マコトが大前に話を聞くと、彼は今セカンドキャリアを探すための人材ステップアップ室にいるという。マコトは本気で働きたいと語る大前に心を動かされ雇うことを決める。

 以来、楽しそうに働く大前に他のバイトも感化され、夏水堂は不思議な魅力のある店になっていったのだが……。(「タピオカミルクティの夢」)

 池袋ウエストゲートパークシリーズの最新作。タピオカ抗争、ラブホ強盗、児童虐待マニアなど、うんざりするような今どきの問題を解決に導く手腕が爽快。

(文藝春秋 1500円+税)

「あかり野牧場」本城雅人著

 舞台は、北海道日高地方にある「あかり野牧場」。家族経営の小さな牧場だが、今年待望の大物がデビューした。その名もキタノアカリ。夏の新潟でのデビュー戦でいきなり2着に8馬身差をつけて圧勝し、続くオープン特別でも5馬身差で勝ったのだ。

 いよいよ次は駿馬揃いのGⅠに挑戦するとあって、牧場主の灯野摂男はもちろん、狭い町の誰もが期待し始めた。

 しかし、突然の破産問題やら、キタノアカリの体調不良やら、次々と難問が押し寄せる。果たしてレースの行方はいかに……。

 本書は、GⅠでの頂点を夢見る牧場主とその家族、それを応援する馬産地の仲間、起死回生を図りたい騎手や調教師など、さまざまな人の夢を乗せて走る競走馬の物語。数々のハプニングを乗り越えて、ダービー当日を迎えるその高揚感がたまらない。

(祥伝社 1600円+税)

「月夜のミーナ」柴田周平著

 主人公は、いつも現実的になれない「ぼく」。着替えもせずに昨夜眠り込んだぼくは、目覚めても気だるさでトイレに立つ気力さえない。やっと上半身を持ち上げると、古い記憶が蘇ってきた。

 それは、ひとり電車に揺られているシーン。無人駅に到着したぼくは、改札を抜けて人影もない田舎道を歩き出す。さらに大きな屋敷にたどりついて開かないドアの上にステンドグラスを見つけたとき、実は自分が電車に乗っていたときに生と死のはざまにいたことに気づく。ぼくがステンドグラスに向かってジャンプすると向こう側の世界に落ちていた。

 現実か夢かわからない世界へ引きずりこまれる、ひきこもり少年の心象風景を描いた物語。不思議の国のアリスさながらの領域に突然現れるミーナとは誰か。少年の世界をご探索あれ。

(河出書房新社 1800円+税)

【連載】ザッツエンターテインメント

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