著者のコラム一覧
北上次郎評論家

1946年、東京都生まれ。明治大学文学部卒。本名は目黒考二。76年、椎名誠を編集長に「本の雑誌」を創刊。ペンネームの北上次郎名で「冒険小説論―近代ヒーロー像100年の変遷」など著作多数。本紙でも「北上次郎のこれが面白極上本だ!」を好評連載中。趣味は競馬。

「素数とバレーボール」平岡陽明著

公開日: 更新日:

 41歳の誕生日に、高校のバレーボール部でチームメートだったガンプ君からメールがくる。ガンプ君は、人に会うと「誕生日と住所、それに身長と高跳びの記録を教えてくれないか」と声をかけ、たとえば北浜慎介が「4月2日生まれ。烏山町5-7-1、174センチ、高跳びは72センチ」と答えると、4/2、5.7・1、174、72というナンバーを持つ人間として登録される。ガンプ君は、あらゆる人間を数字と紐づけて記憶する特性の持ち主なのだ。

 そのガンプ君はアメリカに渡って大成功を収めたという。バレーボール部のチームメートに2億8000万円ずつ進呈するというメールに信憑性があるのもそのためだ。しかし条件が変わっている。いま行方不明になっているみつる君を捜し出すこと、5万年後に再結成する岸高バレーボール部に入部すること。

 というわけで、41歳のチームメートの、さまざまな日々が描かれていくことになるが(この細部がたっぷりと読ませて飽きさせない。これを読むだけでも本書は十分だ)、この中年男小説が類似の小説と一線を画すのは、「5万年後にバレーボール部に入部する」という1点だ。よくある中年小説にしては少しヘンなのである。この条件は何なのだ。最後の最後に、その意味が明らかになると、彼らの青春が、そしてその向こうから私たちの青春が、すごい勢いで立ち上がってくる。

 (講談社 1980円)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    NHK3年連続赤字で番組制作費82億円カット…タモリもダーウィンも華大も豊臣もピンチ!

  2. 2

    萩本欽一〈24〉相方の坂上二郎さんとは「遊ばない・食事しない・夢を語らない」を徹底した事情

  3. 3

    289億円負債で経営破綻した絆ホールディングスと政界の“不可解なキズナ”を福祉関係者が注視

  4. 4

    バナナマン日村が簡単に復帰できそうにない「もう1つの理由」…レギュラー11本抱える人気者のジレンマ

  5. 5

    日テレが「news LOG」和久田麻由子を全面バックアップできない切実事情…佐藤栞里や有働由美子との決定差

  1. 6

    「愛子天皇」潰しが国会の最優先法案? 麻生副総裁の野望に振り回される皇室と国民生活

  2. 7

    本田圭佑がサッカーW杯解説で「独り勝ち」 テレビ&CM争奪戦ボッ発で“ワリを食った”あの人

  3. 8

    高市首相の「反社会性パーソナリティー」を精神科医が懸念…海外メディアもG7での“虚勢”をさらし上げ

  4. 9

    元ボクシング世界王者・薬師寺保栄が妻に無断でレースQの愛人を「養女」に…妻が明かした苦しい胸中

  5. 10

    ソフトバンク中村晃が現役引退へ…当面の仕事は「幼稚な二軍選手」の根性叩き直し