「外事警察」麻生幾著

公開日: 更新日:

 本書は、2009年秋に連続6回で放映された同名のNHKドラマのために書き下ろされたもの。渡部篤郎、尾野真千子、滝藤賢一、石田ゆり子らが出演し、公安部外事課というそれまであまり取り上げられることのなかった部署を扱ったことで話題になった。

【あらすじ】住本健司は、中東の過激派組織や国際テロに対応する警視庁外事第3課(現在は第4課に変更)の作業班班長。住本は、中東系の男が人質を取って立てこもったさいたま市の民家の現場で待機していた。男がテログループとの関連が疑われたからだ。

 SAT(警視庁特殊部隊)が対処するが隊員1人が死亡。警視庁に戻った住本に、アンマンで爆弾テロがあり、ヨルダンの情報機関ともパイプが太い、警察庁国際テロリズム対策課員の中西が行方不明になったとの報がもたらされた。しかも、テロの標的が中西たちだった可能性もあるという。さいたま市の事件との関連は? テロ情勢が進行している気配に一気に緊張感が高まる。

 一方、次期総理大臣を狙う村松久美内閣官房長官は、警察幹部らの国際テロリスト対策に口を挟みながら、この件を自らの野心達成のために利用しようと画策していた。捜査を進める中、テロリストと関係していると思われる精密機器メーカーが浮上、住本らはからめ手から情報を取り込んでいく。

 さらには、住本の協力者(モニター)であるニケから重要な情報を得る。そこから見えてくるのは、日本のテロ対策を根底から揺るがすようなある巨大な陰謀の存在だった。

【読みどころ】複雑に絡み合う伏線を回収していく腕さばきは著者ならではだが、秘密を抱えたまま任務に取り組んでいく公安警察官たちの心の傷にも手を差し伸べ、読み味を深めている。 〈石〉

(幻冬舎文庫 838円)

【連載】文庫で読む 警察小説

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    松任谷由実が矢沢永吉に学んだ“桁違いの金持ち”哲学…「恋人がサンタクロース」発売前年の出来事

  2. 2

    ヤクルト「FA東浜巨獲得」に現実味 村上宗隆の譲渡金10億円を原資に課題の先発補強

  3. 3

    農水省「おこめ券」説明会のトンデモ全容 所管外の問い合わせに官僚疲弊、鈴木農相は逃げの一手

  4. 4

    早大が全国高校駅伝「花の1区」逸材乱獲 日本人最高記録を大幅更新の増子陽太まで

  5. 5

    timelesz篠塚大輝“炎上”より深刻な佐藤勝利の豹変…《ケンティとマリウス戻ってきて》とファン懇願

  1. 6

    早瀬ノエルに鎮西寿々歌が相次ぎダウン…FRUITS ZIPPERも迎えてしまった超多忙アイドルの“通過儀礼”

  2. 7

    国民民主党“激ヤバ”女性議員ついに書類送検! 野党支持率でトップ返り咲きも玉木代表は苦悶

  3. 8

    池松壮亮&河合優実「業界一多忙カップル」ついにゴールインへ…交際発覚から2年半で“唯一の不安”も払拭か

  4. 9

    波瑠のゴールインだけじゃない? 年末年始スクープもしくは結婚発表が予想される大注目ビッグカップル7組総ざらい!

  5. 10

    アヤックス冨安健洋はJISSでのリハビリが奏功 「ガラスの下半身」返上し目指すはW杯優勝