「ソトニ 警視庁公安部外事二課 背乗り」竹内明著

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 警視庁公安部の外事部門は、従来、ロシア・東欧担当の1課、中国・北朝鮮を中心に東南アジアもカバーする2課、中東の過激派組織や国際テロに対応する3課という3課体制だった。それが一昨年の4月以降、2課から北朝鮮担当を独立させて「外事3課」とし、これまでの3課を4課に改称し、4課体制となった。本書は改編前の2課(通称ソトニ)を舞台にしたシリーズの第1作。

【あらすじ】元警視庁公安部外事2課係長の筒見慶太郎は腕利きの“スパイハンター”として周囲から一目を置かれていたが、8年前にある事案で罠にかかってチームは解散、公安部を追われた。現在は在ニューヨーク日本国総領事館警備対策官。

 その筒見に、国連総会に出席するために渡米していた外務大臣が、ホテルの自室で意識不明の状態で見つかったとの報告が入る。部屋には「アビヌス」という署名の謎の手紙が残されていた。事故や病気ではなく暗殺未遂と察知した筒見は、独自に捜査を開始するが、その最中に仲間の総領事館領事が何者かに襲われる。

 一方、かつて筒見の部下で世田谷の交番勤務に左遷された岩城は、警ら中に「影の公安部長」と呼ばれた元警視庁公安部参事官の浜中の遺体を発見する。事故として処理されようとしていたが、どうやら公安部がこの件に関心を持っているらしい。ニューヨークと東京の2つの事件が結びつき、解散した筒見チームが再結成。ウラ作業班の精鋭たちが、中国の諜報機関が仕掛けた巨大な罠に挑む。

【読みどころ】「スパイ天国」といわれて久しい日本だが、表には見えない警視庁公安部のスパイ対策がどのように行われているのか。フィクションながら、その実態をうかがわせてくれる。 〈石〉

(講談社 880円)

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