「生活安全課0係ファイヤーボール」 富樫倫太郎著

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「警視庁ゼロ係 生活安全課なんでも相談室」はシーズン5を数える人気テレビドラマ。本書はその原作。ただし、「警視殿、タメ口たたいてもよろしいでしょうか?」の定番フレーズで年下の上司、小早川冬彦警視(小泉孝太郎)に罵詈雑言を浴びせる寺田寅三巡査長(松下由樹)は、原作では寺田高虎という40代の男のベテラン刑事。小泉・松下のお馴染みの掛け合いに慣れている人には少し違和感があるかもしれないが、KYの小早川とそれに苛つく寺田のコンビぶりは変わらない。

【あらすじ】警視庁杉並中央署生活安全課に新設された「何でも相談室」。署内の厄介者たちが集められる窓際部署で、通称0係と蔑称されている。

 そこへ異例の人事で科警研から異動してきたのが東大卒で国家公務員1種試験をトップで合格し20代半ばで警部のキャリアの小早川。およそ刑事らしくない格好と空気を読まないマイペースな言動で周囲を惑わす。その相方を務めるのは短気で、麻雀や競馬など賭け事が大好きな寺田高虎巡査長。寺田は小早川が人の心に土足で踏み込んでくるのに嫌気が差すが、折しも発生している連続放火事件について、小早川は見事なプロファイリングで犯人像を絞り込んでいく。

 最初は机上の空論だとバカにしていた周囲も、飛び抜けた観察力と推理力によって事件の全容を描いていくにつれ、徐々に小早川を見直し始める……。

【読みどころ】脇を固める人たちが個性的だ。気が弱くてトラブルが起こるとすぐにお腹を壊しトイレに駆け込む亀山係長、「鉄の女」の異名を持つ毒舌の総務・経理担当の三浦靖子、モデルばりの美人だが、格闘技が趣味で腕っぷしの強い安智理沙子巡査部長……。シリーズ6作が刊行中。 〈石〉

(祥伝社 880円)

【連載】文庫で読む 警察小説

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