「太平洋戦争史に学ぶ 日本人の戦い方」藤井非三四著/集英社新書

公開日: 更新日:

「太平洋戦争史に学ぶ 日本人の戦い方」藤井非三四著/集英社新書

 太平洋戦争を題材に日本はいかに戦うことがヘタクソかを描く。私は本書をこの3年半続いた新型コロナ騒動と重ね合わせて読んでみた。本書で指摘されるのは以下だ。そして( )内がコロナにおける日本だ。

①最初に決めた方針が間違いだと分かっても軌道修正できない(人流抑制・マスク・ワクチンの追加接種の継続)②メディアが国民を煽る(連日発表する陽性者数)③司令塔が無能(分科会をはじめとした専門家が何を提言しようが第9波まで来た)④敵が巨大なのが分かっていても根性で打開できると考える(ウイルスは撲滅できないのに対策継続)⑤国民が相互監視のもと協力をし、協力しない者を非国民扱い(感染対策をしない者を公衆衛生の敵、と糾弾)⑥同盟国である独・伊が降伏しても往生際悪く戦争を続け、最後は沖縄を蹂躙され、原爆を2発落とされ、ロシアに侵攻される(欧米各国が「もう終わり」と2022年初頭に判断しても日本は対策をダラダラと続けた)。

 他にもいろいろとあるが、この視点で本書を読むと日本人が負ける理由は太平洋戦争でよく表れているし、その性根が変わっていないことが分かる。とにかく感染対策をし、ワクチンを打ち続ければコロナに勝てる! と信じていたのと同じなのである。

〈日本は緒戦の勝利に眩惑陶酔し、それがなぜもたらされたのかを分析することを怠った。まさに「勝者は学習せず、敗者は学習する」の警句通りとなった〉

 コロナ初期の頃、欧米が激しい被害に見舞われたのに、日本をはじめとした東アジア各国の被害は少なかった。ここで「なぜか日本人はコロナに強い」と考えるのではなく、「対策をすれば抑えられる」と欧米のマネをした。そして対策を続けた2022年、世界有数の感染大国となった。いまだに専門家は「マスクをしろ」「第9波は第8波を超える被害の可能性」と言っているが、以下分析が当てはまる。

〈日本では、初志貫徹、首尾一貫しなければ恥ずかしく面目ないと凝り固まり、方針転換を渋りに渋って万事手遅れとなる場合が多い。どうして進んで自縄自縛となったり、意地になって行動の幅を狭めてしまったりするのかと考えると、そこに虚栄心が働いているからだ。自分がいかに意思堅固で、なにかをやり遂げる強い決意があったかを知ってもらい、できれば史書に名前を残してもらいたい〉

 まったくコロナと同じである。 ★★半(選者・中川淳一郎)


最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ドジャース佐々木朗希に向けられる“疑いの目”…逃げ癖ついたロッテ時代はチーム内で信頼されず

  2. 2

    ドジャース佐々木朗希の離脱は「オオカミ少年」の自業自得…ロッテ時代から繰り返した悪癖のツケ

  3. 3

    備蓄米報道でも連日登場…スーパー「アキダイ」はなぜテレビ局から重宝される?

  4. 4

    上白石萌音・萌歌姉妹が鹿児島から上京して高校受験した実践学園の偏差値 大学はそれぞれ別へ

  5. 5

    “名門小学校”から渋幕に進んだ秀才・田中圭が東大受験をしなかったワケ 教育熱心な母の影響

  1. 6

    大阪万博“唯一の目玉”水上ショーもはや再開不能…レジオネラ菌が指針値の20倍から約50倍に!

  2. 7

    今秋ドラフト候補が女子中学生への性犯罪容疑で逮捕…プロ、アマ球界への小さくない波紋

  3. 8

    星野源「ガッキーとの夜の幸せタイム」告白で注目される“デマ騒動”&体調不良説との「因果関係」

  4. 9

    女子学院から東大文Ⅲに進んだ膳場貴子が“進振り”で医学部を目指したナゾ

  5. 10

    “貧弱”佐々木朗希は今季絶望まである…右肩痛は原因不明でお手上げ、引退に追い込まれるケースも