「焼け野の雉」梶よう子著
「焼け野の雉」梶よう子著
おけいは小松町で飼鳥屋を営んでいる。亭主の羽吉は胸が青く光る鷺を捕らえに旅立ったまま行方不明だ。おけいが飼っている雄の九官鳥の月丸が羽吉そっくりの声で「オケイー」と鳴くと、胸が痛くなる。
年が明けたばかりの頃、おけいは小鳥たちが落ち着きなく渡っているのに気づいた。遠くで聞こえていた半鐘の音が迫ってくる。遠くに黒煙と炎が見えた。だが、小鳥を置いて逃げるわけにはいかない。古手屋の八五郎と長助の親子が引いてきた大八車に夜具に包んだ鳥かごを乗せ、炎を避けて走り出すが……。
九官鳥と暮らす飼鳥屋の女と、彼女を支える町の人びとを描く、心温まる時代小説。 (朝日新聞出版 2090円)