「ジュリーがいた沢田研二、56年の光芒」島﨑今日子著

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「ジュリーがいた沢田研二、56年の光芒」島﨑今日子著

 あのジュリーが、6月25日で75歳になった。この日、さいたまスーパーアリーナでバースデーライブが行われた。2018年、会場が埋まらずに当日中止にしたライブのリベンジ公演で、すでにチケットは完売したという。

 GS旋風が吹き荒れた1960年代後半、ザ・タイガースのジュリーとして女の子たちを夢中にさせた美貌のスーパーアイドルも、今や白髪のおじいさん。それでも新しい音楽を模索し、歌い続けている。なんともかっこいい。

 沢田研二はこの半世紀をどう生きたのか。なぜ輝き続けているのか。バンド仲間、マネジャー、プロデューサー、作曲家、作詞家、衣装デザイナー、筋金入りのファンなど、ジュリーと関わりを持った69人の証言からジュリーの実像に迫ったノンフィクション。

 ザ・タイガース時代の熱狂の日々、解散後に結成したバンド・PYGの顛末、ソロデビュー。「勝手にしやがれ」「TOKIO」といったビッグヒット誕生の舞台裏、唯一無二のライバルだったショーケンとは本当に仲がよかったこと……。たくさんのエピソードが語られる。

 ジュリーは他を圧する大スターだったが、決して慢心することなく、謙虚だった。与えられた仕事は決して手を抜かず、「売れる」ために全力を尽くした。だから、ヒットチャートから長く遠ざかっていた時期は、自分の存在理由を見失って焦燥した。それでも歌うことをやめなかった。

 2008年、ジュリーは還暦ライブ「人間60年 ジュリー祭り」で復活ののろしを上げた。かつてド派手な衣装を見事に着こなし、妖しいまでに美しかったジュリーは変わっていく自分を受け入れた。かつてのファンもそんなジュリーの姿に胸を熱くした。団塊の世代の星はまだ光っている。

 ジュリーはこれからも歌い続けるだろう。命ある限り。

(文藝春秋 1980円)

【連載】ノンフィクションが面白い

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