「デモクラシー」堂場瞬一氏

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「デモクラシー」堂場瞬一氏

 政治不信が蔓延する日本。国民は政治への関心を失い、選挙の投票率の低さにも慣れきってしまっている。そんな我々の意識に鋭く切り込んでくる著者の最新作は、国会が消滅し、有権者からランダムに選ばれた国民議員が国を動かす、近未来の日本が舞台の物語だ。

「政治の質が低下しているにもかかわらず対策が打たれておらず、また何か変えようとしたところで、それは現体制のどこかを少しいじってみようという程度。抜本的な改革は日本人がもっとも苦手とするところです。ならば、それをやってみようというのが本作の着想でした」

 202X年、日本では新日本党が政権を奪取し、憲法改正を行って国会を廃止。国民から抽選で選ばれた1000人が4年の任期で議員を務めている。かつてのようにぞろぞろと国会に集まる必要もなく、オンラインを駆使して会議に参加し、官僚サポートのもとで国を動かしている。最初の4年が終わり、第2期の国民議員として通知を受け取った、20歳の女子大生の困惑から物語は始まっていく。

「現実世界でも、法律という専門的な分野に国民が参加する裁判員制度が機能しています。日本人は勤勉ですから、最初は戸惑ってもいざ選ばれれば一生懸命に役割を果たすはずです。何なら、人の命がかかった判断を求められる裁判員よりも、予算を決めればいい国会の方がよっぽど楽かもしれません(笑)。またコロナ禍以降、一般企業ではさまざまなことがリモート化されていて、議会だってオンラインで可能なはずです。それほど非現実的な物語ではないのですが、現実世界でこの制度が絶対にあり得ないのは、国会議員にとって何の得にもならない、国会を廃止するという提案をする議員が絶対に現れないからでしょうね」

 無駄な歳費や選挙費用も節約され、いいことずくめの国民議員制度。一方で、もう一度議会制度を取り戻そうと、旧与党民主自由連合の大物や現都知事が暗躍を始める。

「群像劇の一面もありますが、実は今回“人間”については深く描いていません。主人公はあくまでも国民議員の“システム”で、そのなかで人々がどう動くかを描きながらシステムそのものを浮かび上がらせています」

 著者の狙い通り、読者は国民議員制度のある世界に放り込まれることで、政治の重要性、そして現実世界の政治の問題点について、いや応なく考えさせられる。

■日本の民主主義について考えるきっかけに

「“日本は民主主義の国だ”とほとんどの日本人が答えるでしょう。しかし、明治維新以降に外国からポンと渡されたようなもので、国民が勝ち取ったものとは言い難い。そのため当事者意識が薄く、政治も“プロ”に任せておけばいいという意識があるように感じます。しかし、それで何とかなっていた時代は終わりに近い。民主主義とは実は危ういものであり、国民が主体的に政治に参加しなければ失われる可能性すらあるのです」

 本作を、非現実世界の物語として楽しみつつ、政治を考えるきっかけにして欲しいと著者。

「最近“どうせ変わらない”と政治を話題にすらしていない人が増えている気がします。飲み屋でのネタのひとつでいいので、政治を考え、語るために本作が役立てばうれしいですね」

(集英社 2145円)

▽堂場瞬一(どうば・しゅんいち) 1963年生まれ。茨城県出身。2000年に「8年」で第13回小説すばる新人賞を受賞しデビュー。「警視庁追跡捜査係」シリーズなどのほか、メディア3部作「警察回りの夏」「蛮政の秋」「社長室の冬」、「宴の前」「ホーム」「弾丸メシ」「幻の旗の下に」など著書多数。

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