「テヘランのすてきな女」金井真紀著

公開日: 更新日:

「テヘランのすてきな女」金井真紀著

 イランでは、女性はスカーフで髪を隠し、体のラインが分からないようチャドルを着る。街では風紀警察が目を光らせ、異性との握手が見つかれば99回のむち打ち。女性は保護者である男性の判断のもとで生きるべし--。本書は、そんな不自由で謎めいたイスラム教国家に生きる女性たちに会い、生の声をつづったインタビュー&スケッチ集である。

 主婦エスマトさん(50歳)は、もう25年もチャドルを着ていないという。2人目を出産後、赤ちゃんを抱っこして着るのは大変だったのが理由だ。さらに5、6年前にはお祈りも断食もやめた。息子に「神様より人間を信じたほうがいい」と言われ、徐々に宗教から距離を置くようになった。知人に宗教観について話すことも聞かれることもないそうだ。

 さまざまな制限があるなかで「先輩から引き継いだ自由を求める旗を私もつないでいく」と述べる弁護士、トランスジェンダーの3人の若者、移民の子どもに勉強を教える人、男の子のふりをしてサッカーをしていた女子代表監督など、「自分らしく」生きようとする女性が多く登場する。6割以上の女性が豊胸手術をするなど興味深い話もあり、女性たちをパワフルに感じると同時に痛みを抱えていることも浮かび上がる。人権とは何か、と考えさせられる一冊だ。

(晶文社 1980円)

【連載】木曜日は夜ふかし本

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人が李承燁コーチ就任を発表も…OBが「チグハグ」とクビを傾げるFA松本剛獲得の矛盾

  2. 2

    農水省ゴリ押し「おこめ券」は完全失速…鈴木農相も「食料品全般に使える」とコメ高騰対策から逸脱の本末転倒

  3. 3

    TBS「ザ・ロイヤルファミリー」はロケ地巡礼も大盛り上がり

  4. 4

    維新の政権しがみつき戦略は破綻確実…定数削減を「改革のセンターピン」とイキった吉村代表ダサすぎる発言後退

  5. 5

    3度目の日本記録更新 マラソン大迫傑は目的と手段が明確で“分かりやすい”から面白い

  1. 6

    国分太一“追放”騒動…日テレが一転して平謝りのウラを読む

  2. 7

    粗品「THE W」での“爆弾発言”が物議…「1秒も面白くなかった」「レベルの低い大会だった」「間違ったお笑い」

  3. 8

    阿部巨人に大激震! 24歳の次世代正捕手候補がトレード直訴の波紋「若い時間がムダになっちゃう」と吐露

  4. 9

    「おまえになんか、値がつかないよ」編成本部長の捨て台詞でFA宣言を決意した

  5. 10

    巨人阿部監督の“育成放棄宣言”に選手とファン絶望…ベテラン偏重、補強優先はもうウンザリ