「ひとつの祖国」貫井徳郎著

公開日: 更新日:

「ひとつの祖国」貫井徳郎著

 物語の舞台は、第2次世界大戦後にソ連と米国に分割統治された過去を持つ日本。経済力をつけた西日本と、経済的停滞に陥った東日本は、ドイツでベルリンの壁が崩壊したのを契機に統一されたが、格差は埋まらない。東日本人は安価な労働力として使われ、東日本人が西日本人並みの生活を送る唯一の手段は自衛隊に入ることだった。

 東日本出身の一条昇と、西日本出身の辺見公佑が出会ったきっかけも、一条と辺見の父親が自衛隊員だったから。2人の友情は大人になってからも続いていた。しかし、ある日、一条が職場の友人に誘われてある集会に出かけたことをきっかけに、東日本の独立を目指すテロ組織MASAKADOに関わらざるを得なくなり、テロを起こした犯人に疑われて追われる身となってしまう。信じられない気持ちのまま、辺見は一条の行方を捜すのだが……。

 分割統治された歴史を持つ日本という架空の設定ながら、経済格差や基地問題など現代日本の社会問題を取り上げた意欲作。良い社会をつくるためにどうするべきなのか、模索する人々の葛藤と混乱がリアルに描かれている。

(朝日新聞出版 2090円)

【連載】木曜日は夜ふかし本

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    TBS「ラヴィット!」の“テコ入れ”に不評の嵐! グダグダぶりを楽しむ独自性損失で視聴者離れ加速危機

  2. 2

    「おい、おまえ、生意気なんだよ」 野村監督は俺の挨拶を“ガン無視”、暴れたろうかと考えた

  3. 3

    「オールスター感謝祭」で“ブチギレ説教” …島崎和歌子は今や「第2の和田アキ子」の域

  4. 4

    NHK朝ドラ「風、薫る」巻き返しを阻む“最大のネック”…見上愛&上坂樹里Wヒロインでも苦戦中

  5. 5

    米国とイランが2週間の停戦合意も日本は存在感ゼロ…お粗末すぎた高市外交を識者「完全失敗」とバッサリ

  1. 6

    スピードスケート引退・高木美帆にオランダが舌なめずり “王国復権の切り札”として白羽の矢

  2. 7

    高市政権が非情の“病人切り捨て”強行で大炎上! 高額療養費見直し「患者の意向に沿う」は真っ赤なウソ

  3. 8

    ブチ切れ高市首相が「誤報だ!」連発 メディア、官邸、自民党内…渡る政界は「敵ばかり」の自業自得

  4. 9

    JFAは森保一氏の“囲い込み”に必死 W杯後の「次の日本代表監督」のウワサが聞こえない謎解き

  5. 10

    『エニイ・タイム・アット・オール』1964年のジョンのギターを聴くだけで元気が出る