「月収」原田ひ香著
「月収」原田ひ香著
66歳の乙部響子は、不倫をした夫と離婚。今は娘の住む街の近くに小さな家を買い、暮らしている。とはいえ、年金は月4万円。なけなしの貯金で家を買ったので蓄えはゼロだ。節約はしているが、あと5万円くらいは欲しいと、シルバー人材センターで袋詰め作業をしたものの1日でギブアップ。
無為な日々を送っていたある日、通りかかった男性、城内錠から「バーで使うミントを庭に植えさせてほしい」と頼まれる。刈り取りは男性自身がやり、都度都度1000円の報酬。響子は水をやるだけだ。1カ月約3万円。話がまとまり、仕事は順調だったが数カ月後、響子は値上げを要求。錠は引っ越しを理由に手を引く。
本書に登場するのは、月収4万~300万円の職業も年齢も異なる6人の女性たちだ。生活を安定させようと不動産投資を始めた売れない作家、不和の両親の介護を見込んで投資信託をしようと節約に励む一人娘、夫と死別し時間とお金を持て余す起業家など、お金があってもなくても誰もが不安を抱えている姿がリアルで、胸がキリリとする人もいるだろう。
お金を通して幸せとは何か、生きるとは何か。そんな問いかけが浮かび上がる連作短編集だ。 (中央公論新社 1870円)