「東映の仁義なき戦い」野地秩嘉著
「東映の仁義なき戦い」野地秩嘉著
東映の映画監督・降旗康男は、高倉健が役者として男を上げたのが「日本侠客伝」だという。高倉のファンは殴り込みのシーンになると、「待ってました」「健さん!」とスクリーンに向かって声をかけた。
主役の高倉は自分の演技が不本意であっても「撮り直し」を要求しなかった。「一発OKじゃなければ芝居しない」と言われたが、撮り直しになったら睡眠不足のスタッフが事故を起こしてケガをするのを心配したからだ。主役はクローズアップのシーンが多いため、ひげが伸びていたり、二日酔いで顔が膨れたりすると撮影できない。高倉は画面に矛盾が生まれないように太らぬよう食事をコントロールし、毎日、理髪店で髪を0.4ミリだけカットしていた。
関係者が、娯楽といえば映画だった時代の東映を語る。 (プレジデント社 2200円)