「『文明の裁き』をこえて」牛村圭著
「『文明の裁き』をこえて」牛村圭著
昭和21(1946)年、日本の戦時指導者28人を訴追した極東国際軍事裁判(東京裁判)が開廷。首席検察官のジョゼフ・B・キーナンは、冒頭陳述で「文明国」である連合国が「非文明」で「野蛮」な日本を裁くという枠組みを提示。ゆえに東京裁判は「文明の裁き」とも形容されてきた。
その後の歴史を見れば、連合国側の「文明の裁き」という主張が「偽善的な虚ろな響き」であったことは明らかで、裁く側に「旧植民帝国の臭いが強すぎる」と言われている。東京裁判は「文明国たることを標榜する連合国の独善であり、実質においては植民地喪失に対する復讐であった」という指摘もあるという。
東京裁判と同時期に行われた対ナチス国際軍事裁判と比較するなど、多視点からこの文明の裁きの実態を解き明かす論考。 (筑摩書房 1760円)