「小鍋屋よろづ公事控 赦しの紅葉鍋」有馬美季子著
「小鍋屋よろづ公事控 赦しの紅葉鍋」有馬美季子著
文化8(1811)年文月(7月)のその日も、お咲と銀二が日本橋小網町で営む小鍋屋「よろづ」は賑わっていた。店では旬の食材を小鍋仕立てで提供しており、今日の献立は鮎を茄子や茗荷などと煮た「冷やし鮎鍋」だ。
銀二は元板前だが訳あって今は包丁を握っておらず、調理はお咲が担当している。昼の客がひけた店に2組の夫婦と子どもが1人訪ねてくる。お咲は結婚前、もめ事の当事者に代わって訴訟を進めたり、手続きを指導する公事師をしており、今も無償で相談に乗っているのだ。今日の相談は、捨て子を8年間育てた夫婦と生みの親の夫婦とどちらに親の権があるかというものだった。(「生みの親か、育ての親か」)
お咲が料理と公事の二刀流に腕を振るう時代人情連作集最新刊。
(徳間書店 858円)