「『まぶたの父』を探す旅 お笑い芸人、イタリアへ飛ぶ」 武内 剛/芸名・ぶらっくさむらい著
「『まぶたの父』を探す旅 お笑い芸人、イタリアへ飛ぶ」 武内 剛/芸名・ぶらっくさむらい著
生き別れた親に会いに行く。そんな話をドラマや映画、はたまた実際の話として聞いたことがある人は多いだろう。
この本の著者である芸人ぶらっくさむらい(本名・武内剛)も父親とは2歳の頃に1回会ったきり、そんな彼が40歳を越えたある日、父親を捜そうと決意する。
ぶらっくさむらいは、私の芸人人生において古くからの戦友である。彼は一時期メジャーネタ番組にも出演し、朝の子ども向けバラエティーで準レギュラーにもなっていた。正直私よりかなり優秀な芸人だ。ここから彼のことは普段呼んでいる略称「ぶらさむ」と書かせてもらう。
世界中にあまたある生き別れ再会エピソード。それぞれに事情があり、重いものだとは思っているが、ぶらさむの場合はまたかなり特殊だった。
まず彼の父親は日本人ではない。彼の母がイタリアで出会ったカメルーン人だ。会いに行こうとしても情報が少なく、とりあえずイタリアに行けば何か手がかりが見つかるかも……という感じで会うまでのハードルが激高な状況。金のない芸人は渡航費用も捻出するのが難しい。しかも彼が決意した時期はコロナ禍。どうやったら会えるか、ぶらさむはまずYouTubeに自分の父への思いの丈をぶつけた動画をアップした。その反応を受け、さらにぶらさむはとっぴな発想にたどり着く。「これ、自主映画にしよう」。より金がかかる決断だったがクラウドファンディングに成功し、100万円強の現金を持ってイタリアに飛ぶ。期間は10日間、果たして彼の父は見つかるのか。
すでに「パドレ・プロジェクト/父の影を追って」として劇場公開されているが、本著は映画よりも深い内容、そして映画の後日談も書かれている。
大事なのはこの話で心揺さぶられるのは家族のパートだけではないところだ。イタリアでのカメルーンコミュニティーや日本でぶらさむを支援した人たちの優しさ、ここに私は生まれて初めて「人類愛」という言葉を感じた。また異国ルーツなのに、その元になってる父がいない状態で彼がどう生きてきたのか正直に書かれていたのも胸を打つ。ぶらさむはネタも、映画も、この本も魂で作っている。彼を知らなかった方もどれかに触れてほしい。尊敬する戦友だ。 (中日新聞社 1870円)



















