タイトルと表紙が前代未聞だ「ネタバレあり双紋島の殺人」下村敦史著
「ネタバレあり双紋島の殺人」下村敦史著
ビブリオバトルというゲームを知っているだろうか。本好きが集まり、5分間という制限時間内で自分の好きな本1冊の魅力を語り、誰がプレゼンした本が一番読みたくなったかを決める知的書評ゲームだ。私はその学生全国大会、決勝戦の司会を6年以上やらせてもらっている。毎回レベルが高くさまざまなジャンルの本が全国1位に輝くのだが、中でも突出したミステリー小説がある。下村敦史さんの「同姓同名」だ。登場人物が全て同姓同名というだいぶ変わった設定のこの本は、中学、高校、大学と全ての部門で優勝を果たした唯一の本。この小説に限らず攻めた設定が多い下村さんの最新作が本著である。もうタイトルと表紙が前代未聞だ。昨今ミステリー小説で議論されるネタバレが表紙に堂々と7つも載っているのだ(共犯者がいる、登場人物の一人は偽名など)。
物語の舞台は財宝が眠るといわれる双紋島。嵐の夜にだけ入れる海底洞窟のために、集まった男女。雑誌で記事を書くルポライターや同行してるカメラマン、ミステリー作家、グラビアタレント、誰彼構わず悪態をつく正体不明な男などさまざまな人間が伝説の財宝に近づこうとしたとき、第1の殺人が起きる。表紙のネタバレにも書いてあるが計4人殺される。果たして殺人者は誰なのか。
ミステリー小説のネタバレなんて一昔前は言語道断といわれていたが、今は逆にショート動画などでネタバレを見てから読む層もいる。どちらがいいのかは置いといて、本著はどちらの立場の人も必ず楽しめるつくりになっている。これだけネタバレしてたら読んでるこちらもだいぶ簡単に解けちゃうのではと思うだろう。そんなことは全くない。下村さんは本当に特殊な設定で小説を作るが、毎度その設定に負けないほど緻密な話に仕上がっているのだ。
本作は現在、重版を重ね下村作品で総部数トップの売り上げになっている。今まで小説のために仕掛けだらけの新居を建てたり、「全員犯人、だけど被害者、しかも探偵」というこれまた衝撃的なタイトルの小説を出したり、そんな下村さんの今までの積み重ねがようやく世間にバレたのだとうれしくなった。
ネタバレありの新体験読書、ぜひ味わってほしい。
(光文社 2090円)



















