著者のコラム一覧
碓井広義メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。81年テレビマンユニオンに参加。以後20年、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶應義塾大学助教授などを経て2020年3月まで上智大学文学部新聞学科教授。専門はメディア文化論。著書に「倉本聰の言葉―ドラマの中の名言」、倉本聰との共著「脚本力」ほか。

綾野剛版「ハゲタカ」 碇ゲンドウ似の鷲津政彦に好印象

公開日: 更新日:

 木曜ドラマ「ハゲタカ」の原作は、2004年に出版された真山仁の同名小説だ。舞台はバブル崩壊後の日本。「ハゲタカファンド」と呼ばれた外資系投資ファンドを率いる鷲津政彦を軸に、銀行や企業など当時の経済状況や世相も取り込んだ物語だった。

 07年にNHKがドラマ化し、09年には映画にもなっている。その両方で主人公を演じたのが大森南朋だ。その印象は強く、今回の綾野剛も比較されることが多い。しかし結論から言えば、綾野の鷲津も悪くないどころか、かなりいい。綾野自身が過去の映像作品にとらわれず、自分なりの鷲津像をつくり上げているからだ。

 エリートビジネスマン風だった大森版鷲津に対し、インテリヤクザ風の綾野版鷲津。寡黙で伏し目がち、何を考えているのかわからないところが魅力だった大森版に比べ、綾野版は喜怒哀楽を明確に表現する。そこから「あなたはまだ生きている!」などの決めゼリフも生まれてくるわけだ。

 また鷲津が何かを考える際、机に両肘をつけ、顔の前で手を組む決めポーズがある。これがアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」の特務機関NERV(ネルフ)総司令であり、主人公・碇シンジの実父でもある、碇ゲンドウにそっくり。和泉聖治監督の遊び心かもしれないがうれしくなった。鷲津と、「使徒」ならぬ「腐った企業」の戦いが本格化するのもこれからだ。

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