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てれびのスキマ 戸部田誠ライタ―

1978年生まれのテレビっ子ライター。最新著「王者の挑戦『少年ジャンプ+』の10年戦記」(集英社)、伝説のテレビ演出家・菅原正豊氏が初めて明かした番組制作の裏側と哲学をまとめた著者構成の「『深夜』の美学」(大和書房)が、それぞれ絶賛発売中!

"残念"な性格を知っているからこそ松坂桃李は挑み続ける

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 約10年前のことだ。まさか受かるとは思わなかったが、主役であるレッド役を射止めたのだ。だが、演技経験はまったくなかった松坂は現場でずっと怒られ続けた。実際、番組開始当初、正直言って滑舌も演技も不安定。「この先、大丈夫だろうか?」と不安になる立ち上がりだった。

 しかし、そんな役者の成長を1年間見守るのも、このシリーズの醍醐味のひとつ。彼はその期待に見事に応えた。最終的には、みんなが「殿」と慕う説得力を持たせる魅力を放ったのだ。だから、いまでも彼のことを「殿」と呼ぶファンは少なくない。

 その後は、朝ドラのヒロインの相手役、童貞の小学校教師、熱血青年将校などを演じた。彼のパブリックイメージは「爽やかで真面目。でも不器用」といったところだろうか。けれど、20代半ば以降、それとは反した役柄も積極的に演じるようになった。

 極めつきは18年4月公開の映画「娼年」(配給ファントム・フィルム)。登場するほとんどのシーンが半裸の娼夫を演じた。「20代の時にやっておいた方が、30代になったときに生きる」(TBS「サワコの朝」19年5月11日)と思ったのだ。

 自分がやり慣れた役ばかりをやっていると、「自分に課すハードルが低いままになってしまう」「性格的に甘えになってしまう」(同前)と。松坂は誰よりも自分の“残念”な性格を知っている。だからこそ、どれにも当てはまらない新しい役柄に挑戦し続けている。

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