著者のコラム一覧
井筒和幸映画監督

1952年12月13日、奈良県出身。県立奈良高校在学中から映画製作を始める。75年にピンク映画で監督デビューを果たし、「岸和田少年愚連隊」(96年)と「パッチギ!」(04年)では「ブルーリボン最優秀作品賞」を受賞。歯に衣着せぬ物言いがバラエティ番組でも人気を博し、現在は週刊誌やラジオでご意見番としても活躍中。

熱狂と感動から逃げたい人間を、この国は非国民にしたがる

公開日: 更新日:

 灼熱の東京の上空に、空自機がケツから吐いて描いたつもりの5色の煙の輪も、色が薄いわ、雲に邪魔されるわで輪っかの見分けもつかず、見事にアテの外れた開幕ショーだった。それでも、暇な家族連れや若い男女が炎天下の競技場前や渋谷の街頭で、雲でぼやけた空にスマホをかざし、もう何でもいいと写真を写していた。“哀れな運動会の始まり”とキャプションを書き添えた人はいるだろうか。大勢に反対されようが不届き千万者を何人出そうが、IOCには逆らえないので決行した五輪。早く終わって欲しいもんだ。感染拡大が怖い。「五輪に反対するのは反日だ」とアベ前首相がひどいことを平気で口走っていたが、五輪を国威発揚のためと思うこと自体、「五輪精神」とやらを歪めているんだ。

 ちなみに、来週8月6日は広島の「原爆の日」だ。世界の出場選手たちはどうするんだろう。主催者は平和の祭りに、選手たちにどんな「おもてなし」を用意してるんだろうか。

 57年前、東京五輪で空自機が描いた五色の輪は記憶にある。小学校の図書室の小さなテレビで、6年生全員で空の輪っかを見せられた。国立競技場で昭和天皇皇后が臨席するその正面に輪っかが見えるように飛んでみせた話を、担任から聞いて、感心した級友が「自衛隊に入ってジェット機に乗る」と出まかせに言っていた。国の威信をかけた大運動会には違いないが、1兆円規模の巨大投資をし、社会にどれほど貧富の格差があろうと、敗戦から立ち直ったぞと世界に見せたかった1964年五輪の国民総動員体制にはかなわない。

■関連キーワード

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 芸能のアクセスランキング

  1. 1

    立花孝志容疑者を"担ぎ出した"とやり玉に…中田敦彦、ホリエモン、太田光のスタンスと逃げ腰に批判殺到

  2. 2

    「ばけばけ」好演で株を上げた北川景子と“結婚”で失速気味の「ブギウギ」趣里の明暗クッキリ

  3. 3

    FNS歌謡祭“アイドルフェス化”の是非…FRUITS ZIPPER、CANDY TUNE登場も「特別感」はナゼなくなった?

  4. 4

    2度不倫の山本モナ 年商40億円社長と結婚&引退の次は…

  5. 5

    《もう一度警察に行くしかないのか》若林志穂さん怒り収まらず長渕剛に宣戦布告も識者は“時間の壁”を指摘

  1. 6

    女子プロレス転向フワちゃんいきなり正念場か…関係者が懸念するタレント時代からの“負の行状”

  2. 7

    学歴詐称問題の伊東市長より“東洋大生らしい”フワちゃんの意外な一面…ちゃんと卒業、3カ国語ペラペラ

  3. 8

    文春が報じた中居正広「性暴力」の全貌…守秘義務の情報がなぜこうも都合よく漏れるのか?

  4. 9

    Perfumeのっち、大学中退話が地上波TV解禁でファン安堵…「ネタに昇華できてうれしかった」の反応も

  5. 10

    福山雅治の「不適切会合問題」で紅白に地殻変動が? “やらかし”がPerfume「トリor大トリ」誘発の可能性アリ

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    3年連続MVP大谷翔平は来季も打者に軸足…ドジャースが“投手大谷”を制限せざるを得ない複雑事情

  2. 2

    自民党・麻生副総裁が高市経済政策に「異論」で波紋…“財政省の守護神”が政権の時限爆弾になる恐れ

  3. 3

    立花孝志容疑者を"担ぎ出した"とやり玉に…中田敦彦、ホリエモン、太田光のスタンスと逃げ腰に批判殺到

  4. 4

    最後はホテル勤務…事故死の奥大介さん“辛酸”舐めた引退後

  5. 5

    片山さつき財務相“苦しい”言い訳再び…「把握」しながら「失念」などありえない

  1. 6

    ドジャースからWBC侍J入りは「打者・大谷翔平」のみか…山本由伸は「慎重に検討」、朗希は“余裕なし”

  2. 7

    名古屋主婦殺人事件「最大のナゾ」 26年間に5000人も聴取…なぜ愛知県警は容疑者の女を疑わなかったのか

  3. 8

    阪神異例人事「和田元監督がヘッド就任」の舞台裏…藤川監督はコーチ陣に不満を募らせていた

  4. 9

    高市内閣支持率8割に立憲民主党は打つ手なし…いま解散されたら木っ端みじん

  5. 10

    《もう一度警察に行くしかないのか》若林志穂さん怒り収まらず長渕剛に宣戦布告も識者は“時間の壁”を指摘