荒木経惟
著者のコラム一覧
荒木経惟写真家

1940年、東京生まれ。千葉大工学部卒。電通を経て、72年にフリーの写真家となる。国内外で多数の個展を開催。2008年、オーストリア政府から最高位の「科学・芸術勲章」を叙勲。写真集・著作は550冊以上。近著に傘寿記念の書籍「荒木経惟、写真に生きる。荒木経惟、写真に生きる。 (撮影・野村佐紀子)

<64>オレは寂しがり屋だから路地のそばにいたい…これはもう生理、本能、でね

公開日: 更新日:

 これは名作だねぇ~。韓国のタル・トンネ(“月の村”の意味、ソウル郊外の金湖洞の別名)で撮った写真なんだ。1990年かぁ。この頃は、こんな路地ばかりだったね。

 タル・トンネは貧しい人たちの街でね。最初に行ったときに、すっごく印象に残ってね。それから韓国に行くと、また行きたいって、何度も行ってるんだよ。2000年以降に行ったときも、細い道なんかは舗装されて少しはきれいになってたけど、やっぱりデコボコ道の路地なんだね。強い雨が降ると、靴のかかとくらいまでダーッと水が流れてくるんだよ。

 路地は産道だって言ってたんだよ。産道って言うと変だけど、子宮に到達する道でしょ、路地は。だから、生理的にいちばん惹かれるんだろうなぁ。路地を歩いていると、両側から湿度とか体温とかが伝わってくる。湿度っつうのは、ちょっとカッコつけて言うと、「愛」っつうか、「愛情」っつうか、ね。「情け」だね。そういうようなことがないと、そういうぬくもりの空気がないと、ものすごく寂しいんじゃない? オレは寂しがり屋だから、路地のそばにいたいわけなんだね。これはもう生理、本能、でね。そこをパ~って離れて、ちょっと広いとこへ行ったりしても、すぐまた戻ってくるの。広いとこも好きだけど、また路地に戻ってくる。そういうところがあるんだよね。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    西武フロントの致命的欠陥…功労者の引き留めベタ、補強すら空振り連発の悲惨

    西武フロントの致命的欠陥…功労者の引き留めベタ、補強すら空振り連発の悲惨

  2. 2
    西武の単独最下位は誰のせい? 若手野手の惨状に「松井監督は二軍で誰を育てた?」の痛烈批判

    西武の単独最下位は誰のせい? 若手野手の惨状に「松井監督は二軍で誰を育てた?」の痛烈批判

  3. 3
    巨人・小林誠司の先制決勝適時打を生んだ「死に物狂い」なLINE自撮り動画

    巨人・小林誠司の先制決勝適時打を生んだ「死に物狂い」なLINE自撮り動画

  4. 4
    全国紙が全国紙でなくなる?「新聞販売店」倒産急増の背景…発行部数の激減、人手不足も一因に

    全国紙が全国紙でなくなる?「新聞販売店」倒産急増の背景…発行部数の激減、人手不足も一因に

  5. 5
    花巻東時代は食トレに苦戦、残した弁当を放置してカビだらけにしたことも

    花巻東時代は食トレに苦戦、残した弁当を放置してカビだらけにしたことも

  1. 6
    日本ハムは過去2年より期待できそう 新外国人レイエスが見せつけた恐るべきパワー

    日本ハムは過去2年より期待できそう 新外国人レイエスが見せつけた恐るべきパワー

  2. 7
    大谷はアスリートだった両親の元、「ずいぶんしっかりした顔つき」で産まれてきた

    大谷はアスリートだった両親の元、「ずいぶんしっかりした顔つき」で産まれてきた

  3. 8
    【中日編】立浪監督が「秘密兵器」に挙げた意外な名前

    【中日編】立浪監督が「秘密兵器」に挙げた意外な名前

  4. 9
    WBCの試合後でも大谷が227キロのバーベルを軽々と持ち上げる姿にヌートバーは舌を巻いた

    WBCの試合後でも大谷が227キロのバーベルを軽々と持ち上げる姿にヌートバーは舌を巻いた

  5. 10
    裏金自民に大逆風! 衆院3補選の「天王山」島根1区で岸田首相の“サクラ”動員演説は大失敗

    裏金自民に大逆風! 衆院3補選の「天王山」島根1区で岸田首相の“サクラ”動員演説は大失敗