著者のコラム一覧
荒木経惟写真家

1940年、東京生まれ。千葉大工学部卒。電通を経て、72年にフリーの写真家となる。国内外で多数の個展を開催。2008年、オーストリア政府から最高位の「科学・芸術勲章」を叙勲。写真集・著作は550冊以上。近著に傘寿記念の書籍「荒木経惟、写真に生きる。荒木経惟、写真に生きる。 (撮影・野村佐紀子)

<64>オレは寂しがり屋だから路地のそばにいたい…これはもう生理、本能、でね

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■人間はセンチでなくちゃいけない

 ソウルオリンピック(1988年)があっただろ。ソウルはオリンピックの前、80年代にはもう路地はなくなってたという感じだったね。日本も同じだったんじゃないかなぁ。町おこしだとかオリンピックだとか、高度経済成長で路地は基本的に消滅しちゃったっていう気分がね。だから、2000年以降に行ったソウルでは、路地に行くんだけれど、路地っつう感じがしないんだあ。前はぬかるみの道だったところが立派に舗装されてて、道路になっちゃった。最初に中上健次さん(小説家)と韓国に行ったときなんか(1984年)、ちょっと広めの大通りでも、あんまり車が通ってなかった。釜山から木浦のあたりだったけど。舗装された道路でも、あちこちいっぱい穴が空いてて、その穴に雨水が溜まってたりさ。戦後すぐの日本みたいなデコボコ道でね。そういうところで、ちっちゃな子どもたちが真っ裸で、水をパチャパチャやって遊んでたんだよ。昔、見た光景なんだね。

 懐かしいっつう感情をねぇ、みんなすっごく低く評価するけど、実は、いちばん大切なことなんじゃないかな。懐かしいなんて言うと、すぐセンチメンタルとか涙もろいとか言うけど、人間はセンチでなくちゃいけないし、涙もろくなくちゃいけないんだよ。みんな、そういうの忘れてんだよね。

(構成=内田真由美)

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