芸能界の“ドン”渡辺晋に詰め寄った小柳ルミ子マネジャー(下)「お久しぶりね」を"デュエット"

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宮川泰氏の"幻の名曲"を再現

『お久しぶりね』は39.7万枚の大ヒットとなり、小柳は見事に復活を遂げた。渡辺プロで異例となる約11年も同じタレントを担当した森氏は、彼女の能力の高さを随所に感じ取っていた。

「『紅白歌合戦』は今も歌の合間に余興がありますよね。昭和の頃は、多くの出場者が一緒に踊るコーナーがよくありました。練習の時、小柳は最初に覚えて、途中から振り付けの先生と一緒に他の歌手に教える。それくらい吸収が早かった」

 次作の『今さらジロー』を最後に森氏はマネジメントから離れ、系列のSMSレコードに出向。渡辺企画を経て、平成2年に渡辺プロの制作部長に就任。昭和末期に低迷していた事務所の立て直しに奔走し、翌年に退社した。

「晋社長はタレントにもマネジャーにも、常に愛情を持って接してくれた。小柳の担当になって5年目の頃、『タレントといかに上手くいっていたとしてもだな、あえて袂を分かって別々の道を行くっていうのもあるぞ。社長として言ってんじゃないぞ。友人として言ってんだ』と声を掛けてもらった時は感激しましたね。小柳のレコーディングに来て、私に『あ、まだいたの?』なんて冗談を言うこともありました(笑い)」

 森氏は現在、『ラナンシーミュージック』で次世代の歌手を発掘している。その1人が"歌のシンデレラ“Rili.”だ。昨年発売の『センチメンタル銀座』では、『宇宙戦艦ヤマト』などを手掛けた名作曲家・宮川泰氏の"幻の名曲"を再現した。

「昭和の頃、渡辺プロが『銀座メイツ』という音楽も聴けるレストランを経営しており、2カ月に1回、所属歌手が出ていました。贅沢にもオリジナルの曲も発表していたんですよ。昭和54年、宮川先生は弟子である園まりさんのために『数寄屋橋から4丁目』という曲を書いてくれた。作詞は岡田冨美子さんでした。すごく良い歌で、私はいつかレコード化したいと考えていました。そんな折、TOKYO FMの番組に出演した縁で、そのプロデューサーに紹介されてRili.に会ったんです」

 2019年、Rili.がフランス開催の『Japan Expo』に出演する際、森氏が舞台の構成を書いた。練習に同席すると、その歌声に惹かれた。

「彼女に宮川先生の曲を歌わせたいと思ったんです。現代に合わせたアレンジが必要なので、作詞の岡田さんに頼んだら『彼女が書いたほうがいいんじゃない?』と言われ、その手もありだなと。私が『センチメンタル銀座』というタイトルに変えて、Rili.に作詞をしてもらいました。各方面に許可を取って、宮川先生の"幻の名曲"を発売できました。この歌をなんとか広めたい。今の大きな夢です」

 かつての盟友・小柳ルミ子と同じように、喜寿を迎えた森弘明氏も意気軒昂と前を向いている。

▽森弘明(もり・ひろあき) 昭和20年2月14日生まれ、東京都出身。開成高校、慶應大学経済学部を経て、昭和44年に渡辺プロダクション入社。沢田研二所属のタイガース、アグネス・チャン、小柳ルミ子などのマネージャーを務める。同期にはサザンオールスターズ福山雅治星野源などを抱える芸能事務所『アミューズ』の創業者である大里洋吉氏などがいる。平成22年からは大里氏のオファーで、東京・浅草を拠点に活動していた昭和歌謡レヴュー劇『虎姫一座』の脚本を執筆。65歳で初めて舞台構成を手掛けた。現在は『ラナンシーミュージック』で"歌のシンデレラ"Rili.などをプロデュースしている。

▽取材・文/岡野誠(おかの・まこと) ライター、芸能研究家。著書『田原俊彦論 芸能界アイドル戦記1979ー2018』(青弓社)では本人へのインタビュー、野村宏伸など関係者への取材などを通じて、人気絶頂から事務所独立、苦境、現在の復活まで熱のこもった筆致で描き出した。巻末資料では公式本にも載っていない『ザ・ベストテン』の年別ランキングデータを収録。田原の1982年、1988年の全出演番組(計534本)の視聴率やテレビ欄の文言、番組内容なども掲載している。

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