キャンディーズの軌跡(後編)伊藤蘭と田中好子 女優として芸能界復帰、結婚とその後

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田中好子はランちゃんとミキちゃんに看取られ55歳の若さで旅立った

 女優・夏目雅子の兄である小達一雄との結婚から19年。2010年10月19日のことだった。がんが再発しながらも女優業を続ける54歳の田中好子を異変が襲った。25年近く田中のマネジャーを務めた丸尾由美子が週刊誌でこう語っている。

「お腹が膨れて変だから病院に行くけど、その前にスポーツクラブに行くから、そっちに迎えに来て」(「週刊現代」12年9月15日号)

 それほど切迫した様子はなく、病院での診断は十二指腸潰瘍で、簡単な手術で済むというものだった。ところが、合併症で高熱などが続き入院は翌11年1月末まで長引いた。

 ようやく退院したのも束の間、2月半ばに手術痕から黄色い液体のようなものが出てきて再び検査を受け、即日入院することになる。変だと思った一雄がエコーを撮ってもらったところ、画像を見た医師が「まずい……」と呟いたという。そして、「好子の身体の中のがん細胞が『ラッシュ』という時期に入ってしまっていることを、医師から聞かされるのです」と文藝春秋12年5月号で語った。ラッシュとはがん細胞が動き出して制御不能に増殖することだ。

 一雄はこのことを田中に告知するか迷う。病室に戻って動揺する夫を見た田中が「私は全部知りたい」と言う。医師から、ゴールデンウイークまで持つかもわからない状態だと告げられていた一雄が告知したのは3月14日。東日本大震災の3日後。死が迫っていることを告げた一雄に対して田中はどうだったのか。

〈「でもかずさん、あなた大丈夫? 平気なの? ごめんねえ。私のためにこんなこと、言わせてしまって……」

「私は最後にお礼を言いたい。お葬式は大きくして、たくさんの人にお礼が言えるものにしてほしい」〉(同)

 余命いくばくもないことはキャンディーズのメンバーだった伊藤蘭藤村美樹にも知らされ、田中を見舞い、2人は亡くなった4月21日も田中の片手を握って最期を看取ることができた。

■盛大な葬儀の“演出”が波紋を呼ぶ

 もっとも、田中との最後の別れである盛大な葬儀は、一雄の演出が波紋を呼ぶことになる。あまりに芝居じみているのではないか、と。亡くなって半年後の本紙の連載「今明かされる女優田中好子物語」ではこう書いた。

〈喪主で夫の小達一雄が映画のカチンコを持って意表をつく仕儀に出たのだ。

「田中好子、第2章、シーン1、テーク1、ヨウーイッ!」〉

〈さらに、である。カチンコが鳴ってから流れたのが生前に吹き込まれた田中の肉声テープ。苦しさを押し殺すようなゆっくりとした口調で感謝の言葉が語られていく。

「もっともっと女優を続けたかった。お礼の言葉をいつまでも、いつまでも皆さまに伝えたいのですが、息苦しくなってきました」

 絞り出す声がどんどん小さくなる。

「カズさん、よろしくね。その日までさようなら」

 時間にして3分20秒のスーちゃん最後のメッセージだった〉

 肉声が流れるこんな演出に、何も聞かされていなかった身内が驚き、戸惑った。この演出についてはマネジャーの丸尾がこう語っている。

「3月20日を過ぎたころ、病室に行くと、ご主人から『好子のメッセージを録音することになったから』と言われました……私が小さなレコーダーを口元に寄せると、田中は3分近い言葉を、最後まで一気に話しました」(前出の「週刊現代」)

 こうしたこともあって、田中家との確執は根深いものがあるようで、遺骨は分骨されて実家に置いてあるとも報じられた。

 しかし、田中は最後まで最愛の一雄を信頼していた。21日の朝、「おはよう」と声をかけた一雄の声に応える力はなかった。トップアイドルにして女優業をも極めた田中好子の55年の生涯はこうして幕を閉じた。(敬称略)

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