林家彦いちさんが見た木久扇師匠の勉強家な一面「接待されるのは好きじゃなかった」

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同じ話をされて頭がクラクラ…

 師匠たちと地方の公演に行くと、地元の人たちと打ち上げがあるじゃないですか。もちろんいい酒が出されて、みなさんいい方ですが、ある時間を過ぎると「いいかい? 人生って言うのはね……」と教訓が始まり、それが3時間、同じ話が繰り返し続くと頭がクラクラしてました。

 旦那方は悪気はないでしょうが、こちらは全然酔えない。ま、そういう方のことは「おもしろおじさん」としてキャラにつくり上げ、新作落語に生かしてましたよ。

 そういう酒席が得意な噺家もいました。小噺をやってご祝儀をもらったり、お付き合いを広げる器用な先輩。酒席にいる旦那方は「噺家はそういうもんなんだ」と僕にも強要するけども、僕は空手の形を披露するくらいで、居心地が悪かった。

 僕が居心地よかった場所は、三遊亭円丈師匠を中心にした新作落語をつくる少人数の集団。僕は元々、創作して表現することに興味があったのでこの世界に入ったんです。なぜか創作の集まりにいる噺家は酒席や人付き合いがそんなに上手でない人ばかり。新作落語をつくり続けるストイックな人たちでした。ちょっと先輩だと柳家喬太郎さん、春風亭昇太さん、三遊亭白鳥さんたち。

 飲みに出かけても「ほら、飲みな」とか「カラオケ歌いな」とは言われないんですよ。「こういう噺、どう思う?」とか「こんな噺をつくろうと思うんだ」なんて会話になる(笑)。今のコンプライアンスから見ると、こちらの方がいいでしょ?

 僕の若い頃は酒の場でたいこ持ちみたいに芸をやっておごってもらう噺家と、シンガー・ソングライター的に落語を創作する噺家が交じった過渡期だったのかもしれませんね。だから、コンプライアンスが厳しい今はついに僕らの時代が来た! という感じですよ(笑)。

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