著者のコラム一覧
松尾潔音楽プロデューサー

1968年、福岡県出身。早稲田大学卒。音楽プロデューサー、作詞家、作曲家。MISIA、宇多田ヒカルのデビューにブレーンとして参加。プロデューサー、ソングライターとして、平井堅、CHEMISTRY、SMAP、JUJUらを手がける。EXILE「Ti Amo」(作詞・作曲)で第50回日本レコード大賞「大賞」を受賞。2022年12月、「帰郷」(天童よしみ)で第55回日本作詩大賞受賞。

NHK-FM「松尾潔のメロウな夜」終了決定 自分の番組打ち切りを体感するのは何ともせつない

公開日: 更新日:

 例えば第1章はこんな具合だ。1979年、中1の主人公は学校を欠席した級友ヤスダのために、その日のプリントなどを渡すべく、安アパートへと向かう。〈錆が広がっていて、もう何色か分からない〉階段を上がって、六畳間に父ひとり子ひとりで住むヤスダ家を訪ねると、〈片膝を立てながら日清どん兵衛を食べていた〉ヤスダがいた。電話もテレビもない部屋でAMラジオから流れるのは〈前年の78年に「みずいろの雨」で人気が盛り上がった八神純子〉の「想い出のスクリーン」。その曲が好きという接点を見出したふたりは、ぎこちなく、しかし互いの体温を通い合わせるように言葉を交わしあうのだが──。

 絶品である。ここで音楽が聞こえてくるのがラジオからでなければならないことは、物語を読み進めれば愛好者でなくとも自然に納得できるはずだ。その後ショッキングな事実が判明し、主人公は生まれて初めて貧困や差別の何たるかを知る。ガラス細工のように脆い少年の心が粉々に崩れずに済んだのは〈ラジオから流れる八神純子〉の記憶のおかげだった。

 ところで、ラジオの子スージーさんもまたラジオ番組『9の音粋』(ベイFM)のDJの顔を持つ。聴けば明らか、「不要不急」の集大成的プログラム。だからこそ必要とするひとたちがいる。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    TBS「ラヴィット!」の“テコ入れ”に不評の嵐! グダグダぶりを楽しむ独自性損失で視聴者離れ加速危機

  2. 2

    「おい、おまえ、生意気なんだよ」 野村監督は俺の挨拶を“ガン無視”、暴れたろうかと考えた

  3. 3

    「オールスター感謝祭」で“ブチギレ説教” …島崎和歌子は今や「第2の和田アキ子」の域

  4. 4

    NHK朝ドラ「風、薫る」巻き返しを阻む“最大のネック”…見上愛&上坂樹里Wヒロインでも苦戦中

  5. 5

    米国とイランが2週間の停戦合意も日本は存在感ゼロ…お粗末すぎた高市外交を識者「完全失敗」とバッサリ

  1. 6

    スピードスケート引退・高木美帆にオランダが舌なめずり “王国復権の切り札”として白羽の矢

  2. 7

    高市政権が非情の“病人切り捨て”強行で大炎上! 高額療養費見直し「患者の意向に沿う」は真っ赤なウソ

  3. 8

    ブチ切れ高市首相が「誤報だ!」連発 メディア、官邸、自民党内…渡る政界は「敵ばかり」の自業自得

  4. 9

    JFAは森保一氏の“囲い込み”に必死 W杯後の「次の日本代表監督」のウワサが聞こえない謎解き

  5. 10

    『エニイ・タイム・アット・オール』1964年のジョンのギターを聴くだけで元気が出る