詩人・歌手・俳優の三上寛さん「故郷の津軽に現代詩を専門に教える大学をつくりたいなぁ」

公開日: 更新日:

三上寛さん(詩人・歌手・俳優/74歳)

「最もラジカルなフォークシンガー」「個性派俳優」「詩人」「異端の怨歌フォーク歌手」──。多種多様な「顔」を持つ男の数奇な人生は「奇跡的な出会い」によっても彩られている。18歳で故郷・青森を飛び出して誰と出会い、どうやって「心の奥底から湧き上がる思いを言葉にして吐き出してきた」のか? 74年の人生をたどりながら「死ぬまでにやりたいこと」を聞いた。

 生まれは東北の小さな漁村(北津軽郡小泊村=現・同郡中泊町)だし、楽器屋もレコード屋もなかったなぁ。

 ギターとの出会いは遅くなかった。中学2年の初夏。近所を歩いていたら、同級生の正人が窓辺に座り、ギター(の開放弦)を「ピーン」と爪弾いた。その音色を聞いた衝撃たるや! オレのギター人生の原点だね。

 小学4年の時、泉谷明先生が国立の弘前大を卒業して赴任してきた。先生は「モヒカン先生」として有名だった。あの時代の津軽でモヒカンですよ。周囲はびっくり仰天です。でも、オレは違った。先生が詩を創作していると聞いて「東京に行ってモヒカン刈りにして詩人になる!」と決めていた。このモヒカン刈りが、オレが歌い手になる糸口になりました。

 高校は50キロほど離れた五所川原高に進み、下宿生活が始まった。独学でギターを覚え、その頃はボブ・ディランに傾倒……って言いたいところですが、小林旭やグループサウンズをやってました。

■明けても暮れても寺山修司

 高校2年、修学旅行先の京都で「寺山修司」と出会った。土産物店が立ち並ぶ新京極を歩いていると「家出のすすめ」という本が目に入り、一気にはまりましたね。著者が、同じ青森県人というのも衝撃的でした。

 それから明けても暮れても寺山修司。ひたすら詩作に没頭し、生徒会長の職権を乱用して謄写版を無断で使い、ガリ版刷りの詩集「白い彫刻」を出した。これが「鶴見の智子さん」との出会いを仲立ちし、そこから本物の寺山修司との関係がつながることになった。

 神奈川・鶴見女子短大に進学した高校の先輩が同級生4、5人と太宰治の生家(青森・金木町)を訪れた際、偶然にも初詩集を読んでくれた。

 翌年の夏休み、彼女たちが再び津軽までやって来て「寺山修司を尊敬している詩集の作者」に会いに来てくれたんだ。

 そこで(中川)智子さんに「秋の学園祭に寺山修司さんが来てくれるから、アナタの詩集を渡してあげる」と言われた。

 秋に智子さんからハガキが届いた。寺山修司が「この子は詩人だね」と言っていた。そう書いてあった。「よし! オレは東京でプロの詩人になるんだ!」。振り返ると思い込みもはなはだしいが、オレの人生は決まったと信じた。もう怖いモンなんてなかったね。

 でも、オヤジが高校1年の12月に死んで「東京に行って詩人になる」なんてオフクロには言えなかった。就職先を探すことになって警察官をやっている親戚に言われ、青森県の警察学校に入るわけですよ。「水が合わない」と思って4カ月で辞めて実家に戻っても肩身が狭くて居心地が悪い。

 そこでオフクロをだますことにした。

「神奈川・藤沢で板前修業。10年経ったら津軽に店を構える。仕送りもする。心配しないでくれ」

 受け入れ先の割烹店は4カ月で辞めた。寮に戻らず、タクシーの運転手さんに「東京方面に1000円で行けるところまで」。降り立ったところは、鶴見の智子さんの住んでいるそばだった。

 後に衆議院議員や宝塚市長を務める智子さんとの出会いが、ここでもオレの人生の分岐点に大きく関わったわけだな。

■関連キーワード

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 芸能のアクセスランキング

  1. 1

    立花孝志容疑者を"担ぎ出した"とやり玉に…中田敦彦、ホリエモン、太田光のスタンスと逃げ腰に批判殺到

  2. 2

    矢沢永吉&甲斐よしひろ“70代レジェンド”に東京の夜が熱狂!鈴木京香もうっとりの裏で「残る不安」

  3. 3

    実は失言じゃなかった? 「おじいさんにトドメ」発言のtimelesz篠塚大輝に集まった意外な賛辞

  4. 4

    国分太一が「世界くらべてみたら」の収録現場で見せていた“暴君ぶり”と“セクハラ発言”の闇

  5. 5

    長女Cocomi"突然の結婚宣言"で…木村拓哉と工藤静香の夫婦関係がギクシャクし始めた

  1. 6

    【武道館】で開催されたザ・タイガース解散コンサートを見に来た加橋かつみ

  2. 7

    男子バレー小川智大と熱愛報道のCocomi ハイキューファンから《オタクの最高峰》と羨望の眼差し

  3. 8

    菊池風磨率いるtimeleszにはすでに亀裂か…“容姿イジリ”が早速炎上でファンに弁明

  4. 9

    《もう一度警察に行くしかないのか》若林志穂さん怒り収まらず長渕剛に宣戦布告も識者は“時間の壁”を指摘

  5. 10

    Snow Manライブで"全裸"ファンの怪情報も…他グループにも出没する下着や水着"珍客"は犯罪じゃないの?

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    高市政権の物価高対策「自治体が自由に使える=丸投げ」に大ブーイング…ネットでも「おこめ券はいらない!」

  2. 2

    円安地獄で青天井の物価高…もう怪しくなってきた高市経済政策の薄っぺら

  3. 3

    現行保険証の「来年3月まで使用延長」がマイナ混乱に拍車…周知不足の怠慢行政

  4. 4

    ドジャース大谷翔平が目指すは「来季60本15勝」…オフの肉体改造へスタジアム施設をフル活用

  5. 5

    実は失言じゃなかった? 「おじいさんにトドメ」発言のtimelesz篠塚大輝に集まった意外な賛辞

  1. 6

    佐々木朗希がドジャース狙うCY賞左腕スクーバルの「交換要員」になる可能性…1年で見切りつけられそうな裏側

  2. 7

    【武道館】で開催されたザ・タイガース解散コンサートを見に来た加橋かつみ

  3. 8

    “第二のガーシー”高岡蒼佑が次に矛先を向けかねない “宮崎あおいじゃない”女優の顔ぶれ

  4. 9

    二階俊博氏は引退、公明党も連立離脱…日中緊張でも高市政権に“パイプ役”不在の危うさ

  5. 10

    菊池風磨率いるtimeleszにはすでに亀裂か…“容姿イジリ”が早速炎上でファンに弁明