トイレ掃除に打ち込む独身男の“悟りの境地”『PERFECT DAYS』ラストの笑みは何を物語るのか?

公開日: 更新日:

 ただし、その確執が具体的に語られることはない。分かっているのは平山が物質的に豊かな生活を離れて下町の安普請に身を寄せ、肉体労働に黙々といそしんでいることだ。彼は寡黙で文学を好む読書家。俗世の汚濁から解放され、無私ともいえる生き方は悟りの境地に達したとさえ見える。

 おそらく平山の暮らしは裕福ではないだろう。だが我々は彼が整理整頓の行き届いた部屋に住み、就寝前に満ち足りた顔で文学書に向かう姿を見て、憧憬のような感情を抱いてしまう。

 都会にありながら、平山は喧噪から逃れて規則正しく、そして自由に生きている。口数が少ないことも相まって「静謐」とも言えるたたずまいだ。掃除人として軽視されながらも一心不乱に、そして楽しそうに働く。羨ましいほど生き生きとしているのだ。

「初老男の平凡な日々。見ていて退屈だった」と本作にケチをつける声もあるが、決して平凡ではない。アヤは平山のカセットテープを1本くすねて返却し、タカシはアヤに会うカネ欲しさに無理を言ってくる。ニコは突然訪ねてきて清掃の仕事を手伝う。高校生の彼女は母親に反発しているが、平山のことはリスペクトしている。その証拠に彼の本棚の一冊を読み始める。そして家に帰りたがらない。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    高市首相、病気を理由に辞任? 囁かれるショートリリーフは麻生指名で「茂木敏充」か

  2. 2

    嵐活動終了で松本潤との「結婚待望論」再燃も…キッパリ否定の井上真央が送る“幸せシングルライフ”と結婚観

  3. 3

    「中傷動画」疑惑で高市首相またブチ切れ答弁連発し逃げ切り画策も…露呈した重大な“落とし穴”

  4. 4

    「笑点」新メンバー春風亭一之輔に“新司会就任”密約説…注目は木久扇、好楽、小遊三の進退

  5. 5

    大谷翔平が負傷して出血…ドジャース指揮官は軽症強調もサイ・ヤング賞に悪影響を及ぼす懸念

  1. 6

    見上愛は桐朋女子中高から日芸演劇学科に進んで演出家を志す 大学同級生・河合優実との本当の関係

  2. 7

    ハリボテの実質賃金「4カ月連続プラス」…巨額の税金つぎ込んだ補助金政策で“ゲタ履き”が実態

  3. 8

    6月7日に「笑点が重大発表」座布団運び山田隆夫は本当に勇退するのか? 「くん」が「さん」に変わった哀愁

  4. 9

    巨人橋上監督代行が坂本勇人に肩入れする事情…出場メンバーとオーダーに“唯一”口を出した

  5. 10

    遠藤航「W杯欠場」の可能性浮上…森保監督が代表引退したはずの吉田麻也を呼び寄せた深謀遠慮