トイレ掃除に打ち込む独身男の“悟りの境地”『PERFECT DAYS』ラストの笑みは何を物語るのか?

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 このように平凡な暮らしの中にいくつもの変化が起きている。我々サラリーマンはつい「毎日同じように働いて退屈だ。俺の人生は平凡すぎる」などと自嘲ぎみに語りがちだが、果たしてそうだろうか。その日その日を振り返ればいくつもの変化に遭遇していることに気づくものだ。退屈と感じるのは日々の出来事に目を留めないからにほかならない。

 変化の象徴が劇中で繰り返し映し出される木漏れ日だ。平山がカメラを向ける木漏れ日は大気の揺れに身を任せて千変万化のうつろいを見せる。一度として同じ表情を見せることはない。彼が木々に向けてシャッターを切る場面は日常にある変化の法則を暗示しているのだろう。

 この作品は人間は何歳になり、どんな境遇にあっても人生を楽しむことができるのだと語っている。生の歓喜にはたゆまぬ変化が潜んでおり、それが人生に芳醇な味わいを与えてくれるのだ。

 そういえば幕末の英雄・高杉晋作は今際の際に「おもしろきこともなき世をおもしろく」と辞世の句を読み、意識が朦朧となった。そこで野村望東尼(ぼうとうに)という女性が下の句に「すみなしものは心なりけり」と付け加えた。晋作は「面白いのぉ」と呟いて27歳の命を閉じた。気持ちのありようで幸せは決まるということだろう。

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