フリーアナ上重聡さんが振り返る 松坂大輔と投げ合った夏の甲子園準々決勝「横浜vsPL学園」名勝負

公開日: 更新日:

上重聡さん(フリーアナウンサー/44歳)

 昨年、フリーに転身した元日本テレビの人気アナウンサー、上重聡さん。甲子園の名勝負である1998年夏の大会の準々決勝、PL学園対横浜松坂大輔と投げ合った高校球児として知られる。思い出の一戦の瞬間を振り返る。

 ──PL学園は春の大会では準決勝で横浜に敗退しました。そして迎えた夏の大会では準々決勝で再び対戦します。

 春に負けてからは、松坂を打たなければ全国制覇はないとわかったので「打倒横浜、打倒松坂」をPL学園の目標に、夏の大会まで練習しました。だから、夏のあの試合は春からのストーリーがあったんです。勝ち進めばいつかは横浜と当たると思っていました。

 ──よその横浜戦で上重さんは七回から登板しました。

 前日の試合で僕は完投していたのでベンチにいましたが、松坂対策の特訓が生きて二回に3点をとり、チームメートながら、「すごい! カッコいい!」と思いました(笑)。僕は前日に「リリーフでいくぞ」と監督から告げられていたので、同点の七回から予定通り登板。僕も3カ月間、これ以上できないくらいに練習してきたので「3イニングをきっちり抑えるぞ」と強い気持ちでのぞみました。まさかあんなに長く投げることになるとは……(※延長十七回までの11イニングに登板)。

■延長17回の死闘。悔しさより終わってしまう寂しさが

 ──延長では十一回と十六回に両校ともに1点ずつとりました。

 印象に残っているのが十二回から十五回までゼロ(0点)に抑えたことです。高校野球はチェンジの際にマウンドにボールを置いていくので、僕がマウンドに置いたボールを松坂が手にして投げる。次は松坂が置いていき、僕がそのボールを使う。松坂は春の大会からスポーツ紙に載るくらい有名でしたから、負けて以来、ずっと意識して練習してきましたし、時には松坂の投げ方を真似してみたりと憧れもありました。もちろん話をしたことはなかったですが、十二回以降は「俺もゼロに抑えたぞ。次はおまえの番だ」とボールを介して会話していたような感覚を持てたんです。「俺、あの松坂と投げ合ってる」という充実した気持ちでいっぱいで、正直この時間がいつまでも続いてほしいと思っていました。

 ──十六回に1点ずつ取り合い、十七回で決着がつく死闘でした。

 実は十五回が終わった時、高校野球連盟の方から両ベンチに「18回引き分けになった場合は明日午後1時から再試合をやります」と告げられました。その時僕らは「松坂は完投するだろうから、明日は投げない」「松坂が投げない横浜に勝っても意味ない」「だったら今日決めなきゃな!」という会話になったんですよ。もしかしたら横浜も今日決着をつけたいと考えたのかもしれません。それがゲームが動くきっかけになったのかも、と。僕らとしてはそのくらい松坂を打って勝つことが目標でした。

 でも、僕が十七回に失点して負けてしまいました(※横浜高校は同年春夏連覇)。僕はその時、充実感と試合が終わった寂しさがあって、悔しさはなかったんです。投げ合いが楽しくて、ずっと続けていたかったから「勝ちたい」という気持ちがなくなっていた。「勝ち負けを超えた感覚ってこんな感じかな」と思いました。この話をPLの先輩にしたら「そんなこと思っているからおまえら負けたんだ」と言われましたが(笑)。

■関連キーワード

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    日本中学生新聞が見た参院選 「参政党は『ネオナチ政党』。取材拒否されたけど注視していきます」

  2. 2

    松下洸平結婚で「母の異変」の報告続出!「大号泣」に「家事をする気力消失」まで

  3. 3

    松下洸平“電撃婚”にファンから「きっとお相手はプロ彼女」の怨嗟…西島秀俊の結婚時にも多用されたワード

  4. 4

    阪神に「ポスティングで戦力外」の好循環…藤浪晋太郎&青柳晃洋が他球団流出も波風立たず

  5. 5

    俺が監督になったら茶髪とヒゲを「禁止」したい根拠…立浪和義のやり方には思うところもある

  1. 6

    (1)広報と報道の違いがわからない人たち…民主主義の大原則を脅かす「記者排除」3年前にも

  2. 7

    自民両院議員懇談会で「石破おろし」が不発だったこれだけの理由…目立った空席、“主導側”は発言せず欠席者も

  3. 8

    参政党のSNS炎上で注目「ジャンボタニシ」の被害拡大中…温暖化で生息域拡大、防除ノウハウない生産者に大打撃

  4. 9

    自民党「石破おろし」の裏で暗躍する重鎮たち…両院議員懇談会は大荒れ必至、党内には冷ややかな声も

  5. 10

    “死球の恐怖”藤浪晋太郎のDeNA入りにセ5球団が戦々恐々…「打者にストレス。パに行ってほしかった」