映画「国宝」ヒットの背景…古典芸能を扱いながら幅広い観客の心を掴む
130年近い時を経て溶け合った歌舞伎と映画
またこれは喜久雄が15歳の時から約半世紀を描いているが、その時代背景の大部を占めるのが昭和の時代。芸を究めるためなら、喜久雄にとっても俊介にとっても、女性たちは人生の踏み台になって消えていく存在だ。見上愛や高畑充希、森七菜が演じる女性たちの悲しみや切なさの描写を最小限に絞って、喜久雄と俊介の関係性にフォーカスした物語の構成が、今の時代にこの作品を成立させる上で好ジャッジだったと言える。
2人の役者を取り巻く男女間のドロドロとしたリアルにまで手をつけたら、ここまで胸に響く歌舞伎役者の芸道映画にはならなかっただろう。演じた俳優の芸と演技、外国人カメラマンの見たいものを見せる映像、そして監督の見事な物語構成。これらが一体となって「国宝」は古典芸能を扱いながら、幅広い観客の心をつかむものになった。最初の出会いから130年近い時を経て、ようやく歌舞伎と映画は一つに溶け合った作品を生み出したのである。
(映画ライター・金澤誠)
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