謎を深めただけの「ラストインタビュー」 藤島ジュリー景子の話題の本を読んで「それはあり得ない」と思った部分
ほとんど話したことがないのだから、性加害についてなど知るわけはない。文春がジャニー喜多川の性加害問題を連続追及し、ジャニーズ事務所が名誉毀損で訴えた裁判で、高裁は「彼のセクハラについては認定した」。だが、母親メリー喜多川の、「本人が無罪だといっている。負けたのは弁護士のせい」という言葉を今でも信じていると言っている。さらに、「メリーがジャニーの蛮行に気づいていなかったことはあり得るのか」という質問にも、「それはあり得たと思います。(中略)母も弟であるジャニーの性癖を知ろうとはしなかったでしょうから」。
それはあり得ない! 文春が追及する8年前に週刊現代がジャニーの「ロリコン趣味」を取材したとき、メリーは記者に対し体を張って阻止しようとした。さらにメリーは、「弟は病気だから」と周囲に漏らしていたのだから。
ジュリーは、自分が手掛けた「嵐」の成功に母親のメリーが嫉妬して決定的な溝ができ、以来、まともに話したことがない。ジャニーとメリー両方と会話もなかったのだから、性加害のことなど知るわけはないと言い募る。
本を出せばまたいろいろ言われるがという問いには、「私はもうたくさんのものを失ってきましたから。これ以上なくすものはないと思うので」と最後まで開き直る。
「嵐」成功までの秘話や「SMAP」解散の舞台裏など、ファンなら喜ぶであろうエピソードもある。だが、全体としては「ジュリーという謎」をさらに深めただけの本と言わざるを得ない。 (文中敬称略)