ラッシャー板前さんは芸能生活42年目で初講演会「抱腹絶倒の体験談で全国を回りたい」
地吹雪に遭遇して視界ゼロの恐怖も
自然の恐怖を実感したロケもあった。
「青森県の浅虫温泉の奥にある湖まで行って、白鳥にエサやりする企画でした。その途中で地吹雪に遭遇。視界ゼロ。右も左も真っ白で何も見えない。ホワイトアウトです。地吹雪がやむまで車で待機し、やんだらちょっと動き……。またふぶいたらすぐ止まって待つ。後続車は前の車が見えなくて、ドンとオカマを掘られるんじゃないかなんて考えたり。ヒヤヒヤもんでしたよ」
海に車ごとダイブするロケにも挑戦した。
「車ごと、海にバーン!って突っ込んで、そこから脱出する企画です。しかも、『すぐ出てこないで3分くらい海の中にいてください』なんて、めちゃくちゃ。もちろん空気タンクを使うわけだけど、スキューバダイビングはやったことがない、初体験です。練習では息ができたけど、ダイブして水が入ってきたら、もうパニックです。全然、呼吸ができない」
現場は沖縄の海。車はたった1台。一度終わると、クレーンで車を引き上げ、水を抜いてまたダイブする。それを何度か繰り返した。
それでも、どうにかこなすことができたのはスタントマンが5、6人乗り込み、海に突っ込んだ瞬間に「3人くらいが俺の体にタッチして支えてくれたから」だという。
「あっ、俺は守られてるって思って、最後は落ち着いてやれたので、どうにか乗り切ることができました。俳優の小林旭さんも何度も挑戦したけど、一度も成功しなかったと言ってました。『これをできる人はなかなかいません』と言われてアクションタレントとして自信になりました(笑)」
人生でもっとも肝を冷やしたのはオーストラリアで体験したタイガーモスという戦前の軍用訓練機のアクロバット飛行だという。パイロットが上下に回転したり、急降下したりを繰り返す、あれだ。ラッシャーは気を失いかけた。
「パイロットはオーストラリア人のTシャツに短パン、ビーチサンダルのおっさん。こんなんでやれるの? と、まずビビった。僕は前の席に乗せられました。いきなりの急上昇から宙返りし、それから逆さまになって、まるで木の葉みたいに落ちて行く。急上昇の後、いきなりエンジンを止めたりもするんですよ。その瞬間、俺はこのまま墜落して死ぬのかと思いました。でも、彼は笑いながら、『サービス! サービス!』なんて笑っていて。しかも、それがいつ終わるのかわからない。もう二度とやりたくないですね(笑)」
そんな命懸けの体験をしたのに、カメラマンも恐怖のあまり撮影していなかったというオマケ付き。この時の貴重な映像は残っていない。
スカイダイビングも経験している。
「上空4000メートルって聞くと怖そうって思うでしょ? でも、高い方が楽なんです。むしろ2000メートルくらいの方がパラシュートを開くための余裕がないから緊張する。インストラクターも『4000メートルは安心』と言っていました」
ただし、バンジージャンプだけはオファーがあってもずっと断り続けた。「あれだけはやりたくない」と言う。だが、一度だけ渋々、オファーを受けたことも。苦い経験だ。
「『やらなくても大丈夫』と言われてたんです。それでも、とりあえず上までは行ってみるかと。でも、結局、やらなかった。そうしたら現場の空気が最悪で……。その後の僕は居場所がなかったですね。それ以来、無理なものは最初から断ると決めました」
そんな話のネタは尽きないから、講演会はいつでもOK。「これからはどんどんやっていきたい。講演会で全国を行脚するのが目標ですね」
日本中知らないところがないが、一つだけかなえたいこと、場所がある。
「あえて『死ぬまでにやりたいこと』と言われたら、オーロラを見てみたいんですね。実はオーロラは南極とかアラスカとか行かないと、見られないものだとずっと思っていました。でも、最近ニュースで『北海道でオーロラが観測された』と知って、びっくり。足寄郡陸別町というところがオーロラの発生確率が高いらしい。陸別町は日本一寒い場所って言われてるみたいですけど、まだ行ったことがないんですよ。うちのカミさんは寒いのが苦手だから、娘、息子と一緒に行くのもいいかなって思ってます」
オーロラを見ることができるかどうかは気候条件などに大きく左右される。行けば必ず見ることができるわけではない。
「泊まり込んでも運が悪ければ見ることができないかもしれない。やっぱりタイミングでしょうね。陸別町にはこの日は見えやすいといったデータがあるはずです。いつ頃がチャンスなのか調べて、今からオーロラ観賞の計画を立てる予定です。テレビもぜひ、同行して撮影してほしいと思います」
(聞き手=浦上優)