最新回の朝ドラ「あんぱん」ウラの見所~手嶋治虫をも魅了するのぶ、魔性の女では? ヤムおんちゃん「老けたな」が届かない若々しい美貌
第23週「ぼくらは無力だけれど」#115
【朝ドラのツボ!】
蘭子(河合優実)が柳井家に草吉(阿部サダヲ)を連れてくる。久々の再会に大喜びののぶ(今田美桜)たち。そのころ、手嶌(眞栄田郷敦)の仕事場を訪れていた嵩(北村匠海)は、映画の主人公について考えながら草吉を思っていた。
帰宅後、家に草吉が来ていたと聞いて驚く嵩。1か月後の8月15日。それぞれが黙とうを捧ささげる中、嵩は何かを決意し…。
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【本日のツボ】
「逃がさんで、ヤムおんちゃん。ここで会うたが百年目やき」
※※以下、ネタバレあります※※
昨日、「蘭子はとんでもない人物と出会いました」と林田アナがナレーションで言っていましたが、予想通り、ヤムおんちゃんでした。
八木の会社にあんぱんを配達しにきた業者ということでしたが、前回のシーンでは工場で働いているふうだったのに、配達もしていたのですね。作って、配達もして、とヤムおんちゃん“じいさん”なのにコキ使われているようです。
八木(妻夫木聡)が孤児院へ届けるあんぱん100個を発注していたわけですが、それなら、八木の会社ではなく、直接、孤児院に届けたほうが効率的では? と思ったり…。
それにしても、蘭子です。「ここで会うたが百年目」などと物騒な物言いをするのはいかがなものか、と。それではまるで、ヤムおんちゃんが朝田家の財産を盗んで逃げ回っていたように聞こえてしまいます。
時代劇などで、「ここで会ったが百年目」というのは親の仇とかに使う台詞だったりしますから。
「お前ら全員老けたな」って…そう?
最も普段は冷めた感じの蘭子が珍しく熱くなったおかげで、朝田家のみんながヤムおんちゃんと再会を果たすことになります。
「しかし、あれだなあ。お前ら全員老けたな」。ヤムおんちゃんの言葉に固まる朝田家の女子たち。
その言葉どおり、羽多子(江口のりこ)や蘭子、メイコ(原菜乃華)は髪型もメイクも変わり、それなりに年をとった感もありますが、つやつやストレートヘアに皺のひとつもないのぶを見ていると、その言葉がまったくこちらに届いてきません。そののぶに「人間は平等に年をとるがです」と言われても、説得力ゼロです。
あるいはのぶは、嵩の稼いだお金をすべてエステに使っていたのではないか、と穿ってしまいそうなほど若いのぶなのでした。
ヤムおんちゃんの戦争の話、亡くなった釜じい(吉田鋼太郎)には話していましたが、それを誰にも言わなかったのですね。ヤムさんが突然いなくなって、みんなが心配しているのだから、そのあたりの事情は家族で共有しているものかと思っていました。
のぶが嵩と結婚したのを知って喜ぶヤムおんちゃん。
のぶに、「チビ、おれはお前が一番心配だったんだよ。世の中がひっくりかえったあと、愛国の鑑はどうやって生きていくのか、立ち直れるんのかとか、嵩みたいに線路で寝ちゃうんじゃないかって」と言っていましたが、のぶにそんな繊細さってありましたっけ?
そして、ここにも、のぶを絶賛する者がひとり。嵩が描く女性を「温かくて、優しくて、強くて、目が好奇心に輝いてる。あれ、奥さんでしょ?」とベタ褒めの手嶋治虫。
“漫画の神様”をも魅了するのぶ、案外、魔性の女なのかもしれません。
(桧山珠美/TVコラムニスト)