著者のコラム一覧
井上理津子ノンフィクションライター

1955年、奈良県生まれ。「さいごの色街 飛田」「葬送の仕事師たち」といった性や死がテーマのノンフィクションのほか、日刊ゲンダイ連載から「すごい古書店 変な図書館」も。近著に「絶滅危惧個人商店」「師弟百景」。

HIRAKU書店(池袋)“窓”と“本”がモチーフのサードプレイスにシェア型書店

公開日: 更新日:

 池袋駅から明治通りを北東に進み、六叉路を越えた少し先。2階建てのしゃれた建物だ。

 入ると、左手に「24時間 本屋が好き 福袋本」とシールを貼った茶封筒十数個ほどがおのおの200円で並んでいる。

「中に入っている本のヒントも書き添えていますよ」と、HIRAKU書店コーディネーターの渡辺由美子さん。ほほ~。「全国のおもしろ本屋22店」「本屋の小説」などと手書きあり。さっそく選ぼうとしている自分に苦笑い。取材だ、取材。

 建物は126平方メートル(1階)。シェア型本屋は手前にあり、その向こうはコワーキングやギャラリーのスペースのよう。

「この建物は弊社──創業97年の窓の卸商社の倉庫でしたが、使わなくなっていて」とマテックス株式会社(豊島区)総務統括部係長の岩崎美紗子さんが話し、渡辺さんが「私のパートナーでもある中村陽一が、立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科を定年退職するにあたって、大量の蔵書の保管場所を探していて」と続ける。

 両者の出会いがあり、マテックス社長が勇断。建物を丸ごとリノベーションし、いわく「暮らしの内と外の境界をつかさどる“窓”と、知の探究と構想力を育む“本”がモチーフのサードプレイス」として2023年に誕生。HIRAKU書店は「(月3300円で)書店オーナーになりませんか」に手を挙げた人たち約21人の棚で構成されている。

多彩な棚主たちによるミニイベントで同好の士とつながる

 大阪のフォルモサ書院店主・永井一広さんの翻訳本「台湾書店百年の物語」を見つけた。実は、読んで感動したばかり。「台湾へ足しげく通い、本屋巡りを楽しまれている『臺灣文創書店東京池袋』さんの棚ですね」と渡辺さん。「Book Toy BOX」さんの棚の目下のテーマは、「ボランティアってなんだろう」と「KJ法の創始者、川喜田二郎を知る」なんだ。おや? 「魂の退社」を置く「クマゲラ文庫」さんは、北海道・東川町周辺在住の人たちだって。

 ずいぶん多彩。何やかやと一家言ありそうな人たちだなーと思いきや、「棚主さんは、店内でミニイベントを開催していただけるんです」と渡辺さん。9月も、「オランダの本屋と図書館を巡る旅」(20日)、「どうしたら伝わる? 外国人へのことば教育を考えよう」(27日)など目白押しだ。シェア書店で視野を広げ、同好の士とつながる──。いいね! 

 中村さんの「社会関係学」関係の蔵書1万5000冊が入った閉架書庫にも、希望すれば入れる。

◆豊島区上池袋2-2-15 HIRAKU IKEBUKURO 01 SOCIAL DESIGN LIBRARY内/℡03・3916・1254/JR池袋駅東口から徒歩12分/午前11時~午後7時、月曜休み

うちの注目の本

「りんたろうといのちの種」企画・制作(宮崎県)椎葉村役場農林振興課

「地域おこし協力隊を機に宮崎県の北方・椎葉村に住む『書肆鵬』さんのおすすめ本です。お父さんの故郷の椎葉村に越してきた、たぶん小学生のりんたろうが、5000年前から伝わる特別なソバの種を通して、焼き畑農業や神楽など村の伝統に興味を持っていくお話が、絵本になっています。不思議なことに(笑)、著者名が書かれていない。しかも非売品。なので、こちらで閲覧してください」(渡辺さん)

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