サントリーHD新浪前会長に進退を「委ねられた」同友会の当惑…違法薬物疑惑に潔白強調、代表幹事は辞めず
違法薬物疑惑で警察に捜査されているとして、突然の辞任発表で世間を驚かせた新浪剛史・前サントリーホールディングス会長。一夜明けた3日、経済同友会の代表幹事として定例会見に臨み、「法をおかしておらず潔白だ」と何度も強調した。
新浪氏は大麻の有害成分「テトラヒドロカンナビノール(THC)」が含まれたサプリメントを米国から輸入した疑いで福岡県警の家宅捜索を受けた。自宅から違法薬物は見つからず、簡易の尿検査では陰性だった。
この件について、新浪氏の説明はこうだ。「時差ぼけ」対策として知人に勧められ、適法な商品との認識で米国で「カンナビジオール(CBD)」を購入したが、結果的に受け取らなかった。その知人が、2回目として福岡在住の弟に郵送し、新浪氏に送る手配をしたところ、弟が逮捕されたという。2回目は想定外で、「所持も使用もしておらず、輸入も指示していない。(自身が購入したものと)同一であるかも分からない」と話した。
「解任」に近い形で会長職を辞任させられたサントリーについては、「(会社に)傷がつかないようにするため」と納得しているようすを見せたが、解せないのは経済同友会の代表幹事をすぐ辞任しなかったことだ。当面は活動を自粛して岩井睦雄副代表幹事(日本たばこ産業会長)を代理とし、自身の進退は「同友会に判断を委ねる」とした。審査の手続きは「捜査の状況も踏まえつつ、月内をメドに進める」(岩井氏)という。
代表幹事には通例、企業の会長や社長が就く。「サントリーの会長を辞めたのに、なぜ代表幹事は辞めないのか?」と会見で質問されたが、新浪氏は「社外取締役もやっている」「サントリーはサプリの会社だから辞任した」などと答えた。「判断を委ねる」とは言うものの、2日の朝日新聞の取材に「今のところ辞める考えはない」と話していたから、本音では辞めたくないのだろう。
「同友会は経団連や商工会議所と違って、個人の資格で入る。審査といっても、ルールや基準はないに等しく、新しい事実が出れば別だが、新浪氏本人に辞める気がないと、旗を振れる人はいないでしょう」(財界関係者)
実は、財界でも「辞任論」は広がっていないらしい。歯に衣着せぬ新浪氏は10年以上、民間議員を務める政府の経済財政諮問会議で「物価高対策の後手」を指摘するなど発言力があり、「憎まれ役の代わりがいないから続けて欲しいということ」(前出の財界関係者)。林官房長官は3日「現時点でご本人からの申し出があったとは承知していない。適切に対応する」と会見で答えていた。財界の人材難が露呈か。