「『ありのまま』の身体」藤嶋陽子著

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「『ありのまま』の身体」藤嶋陽子著

 現在放映中のTVドラマ「レプリカ 元妻の復讐」は、醜い顔が原因で同級生に子どもの頃からいじめられ、さらには夫までも略奪された主人公が、整形手術で顔を変えて相手の女に復讐を企てるというもの。こうした「見た目」に起因する重圧や偏見は多くの人にリアリティーのある問題として理解されている。というのも「日々の生活のなかでは、自分の身体は絶えず他者からの目線にさらされ……自分が望むとも望まざるとも、容姿に何らかの評価が下される場面に遭遇する」からだ。

 近年、ルッキズムに対する意識が高まり、多様な体形を肯定する「ボディーポジティブ」のムーブメントも起こっている。本書は、ボディーポジティブの動向やそれに対応した見た目をめぐる産業の取り組みについて考察しながら、自分自身の身体とどのように付き合っていけばいいのか考える。

 ボディーポジティブは、ファッションや美容の広告に細身の白人女性ばかりが起用されることへの抗議から広まったものだが、そこには、「ありのまま」の自分の身体を愛そうというメッセージが込められていた。日本でもその流れからプラスサイズファッションの普及となり、多くの人気プラスサイズモデルも生まれた。しかし、そこでも「太っていてもかわいい」「モテぽちゃ」といった美醜の問題からは逃れられず、自分の見た目と向き合い続けなければならない。

 また、「ありのまま」は容姿への執着から解き放つことばとして使われているはずだが、これも実は、何も手をかけないことを意味するのではなく、自分なりの美しさを探し、そこに自身や愛着を抱いて磨き上げていくという努力が求められているのだ。企業はその両義性を巧みに消費の戦略として取り込んでいる。

 一筋縄ではいかない問題だが、本書が発する、容姿の問題は個人の問題ではなく社会の問題であるというメッセージはしっかり受け止めるべきだろう。 〈狸〉

(青土社 2420円)


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