「貯金しなければ」と思っているのに散財してしまう理由
「貯金しなければ」と頭では分かっているけど、ついつい目の前の欲求に負けてしまう--。サンタクララ大学のシェフリンとコーネル大学のセイラーの研究(1988年)は、この永遠のテーマともいえる行動に対して、科学的に説明しています。
セイラーは、この研究を含めた行動経済学への貢献で、2017年にノーベル経済学賞を受賞しているのですが、ここでは人々がお金をどのように貯蓄したり使ったりするのかについて、「行動生命周期仮説」という新しい考え方を提案しています。
行動生命周期仮説では、長期的な視点で物事を考える「計画者」と、今この瞬間の快楽を求める「実行者」という2つの自己が登場します。計画者は「将来のために貯金しよう」など計画を立てますが、実行者は「今この服が欲しい!」などと短期的な欲求を優先します。言わば、計画者は「未来」を、実行者は「今」を求めるというわけです。
セイラーらは、MBAの学生を対象にした調査を行っています。彼らに、「今受け取る2400ドルのボーナス」と「5年後に受け取る2400ドルの遺産」という2つのシナリオを提示すると、学生たちは定期的な収入として得たお金を最も使いやすく感じ、次に一時金(ボーナスなど)で得たお金、そして将来受け取る予定の遺産などのお金は、ほとんど使わずに貯蓄に回そうとすることが示されたといいます。