三菱商事が洋上風力発電から撤退…気になるウォーレン・バフェット氏への忖度
三菱商事は8月27日、秋田、千葉両県沖の3海域で進めてきた洋上風力発電所の建設計画から撤退すると発表した。中西勝也社長が東京都内で記者会見し、「建設費用が4年前の入札時の見込みから2倍以上に膨らんだことで採算が合わなくなった」と説明。「地元の期待を裏切る結果になって大変申し訳ない」と謝罪した。ただ、自身の経営責任に関しては「脱炭素社会の実現のため引き続きやることはある。引き続き責務を全うし、三菱商事をリードしたい」と述べ、引責辞任は否定した。
■522億円の損失を計上
三菱商事はペナルティーとして次回の公募には参加できず、積み立てた保証金約200億円も国に没収される。ただ、「撤退に違和感はない。三菱商事は、すでに昨年4~12月期のグループ決算で522億円の損失をすでに計上していた」(メガバンク幹部)というのが金融界の見方だ。
そもそも当該洋上風力プロジェクトは、受注段階から波乱含みだった。三菱商事は、政府が2021年に実施した3海域の事業者公募で、いずれも圧倒的な低価格を提示して落札した。「三菱商事の“総どり”と呼ばれた案件で、入札で三菱商事が示した売電価格は、入札上限の29円(円/キロワット時)を大きく下回る11.99~16.49円だった。20円台で応札した事業連合が多い中、圧倒的な安値が受注独占の決め手となった」(大手商社幹部)という。三菱商事は、オランダの電力子会社「エネコ」で培ったノウハウを取り入れることで、十分に採算が取れると判断していたと思われる。