著者のコラム一覧
元川悦子サッカージャーナリスト

1967年7月14日生まれ。長野県松本市出身。業界紙、夕刊紙を経て94年にフリーランス。著作に「U―22」「黄金世代―99年ワールドユース準優勝と日本サッカーの10年 (SJ sports)」「「いじらない」育て方~親とコーチが語る遠藤保仁」「僕らがサッカーボーイズだった頃2 プロサッカー選手のジュニア時代」など。

鈴木彩艶〈後編〉LINEアイコンを代表から浦和に戻した…23歳守護神の謙虚さの礎(浦和ジュニアユース・ユース元監督・工藤輝央)

公開日: 更新日:

GK鈴木彩艶(イタリア1部パルマ/23歳)

 年代別W杯の常連だったが、常に谷晃生(町田)の後塵を拝してきた鈴木彩艶だが、第2次森保ジャパン発足後の2023年からは継続的に日本代表に招集され、2024年アジアカップ(カタール)以降は正守護神に完全定着を果たした。当初は数々の批判にもさらされたが、「本人はしっかりとメンタルをコントロールして苦難を乗り越えました」と浦和ジュニアユース、ユース時代の恩師・工藤輝央氏(現浦和レッズレディースSD)が話を続けた。(【前編】からつづく)

  ◇  ◇  ◇

 ──鈴木は年代別代表では谷選手の控えが長かったですが、浦和でトップに昇格してからも西川周作という偉大なGKを超えられずに苦しみました。

「僕がトップのコーチを務めていた5年前、彩艶はいつも『周作さんはすごい』と言っていました。周作は週末の試合に向けて、自分なりにしっかり計算をして調整していたんですけど、彩艶はついていくのが精一杯だった。余裕を間近で見て感じていたから、そういう発言になったんでしょう。それに試合のパフォーマンスも凄まじかった。特に印象的なのは、2021年6月のアウェー・柏戦。当初は彩艶が先発する予定だったんですが、(新型コロナウイルスの)PCR検査の手続き上の問題が発覚し、急きょ周作が出ることになったんです。その日の朝、周作は僕と10キロ走って疲労も溜まっていたはずなのに、抜群の仕事ぶりを披露した。それを彩艶が見て『本当にすごい』としみじみ話していましたけど、あのマインドから学ばされたことは少なくなかったでしょう。2023年夏に浦和を離れる時、『最後まで周作さんからポジションを奪えなかった』とコメントしたのを本人も忘れてはいないと思います」

 ──先輩を素直にリスペクトできるのが鈴木彩艶選手のよさですね。工藤さんも子供時代から「謙虚になれ」と口癖のように言っていたそうですが。

「思い違いをしてチャンスを活かすことができなかった選手をたくさん見てきたので、彩艶に口を酸っぱくして言ったところはあります。中学生くらいの頃で言うと、思い違いとは違いますが、印象に残っていることはあります。LINEのアイコンを浦和から代表に変えたこと。『浦和レッズがあっての代表でしょ。彩艶のメインはどっちなの』と問いかけたら、瞬く間に浦和に戻していましたけど、そういうお茶目な一面はありました(笑)。もともとご両親の教育も素晴らしかった。彩艶は小学生の頃から洗濯物を自分で洗っていたと聞いています。土の上に転んだりするGKはジャージが汚れるんですけど、それも自分で落としていたといいます。目指すべきところが高いから、それも苦労とは感じなかったんでしょうね」

 ──2023年夏にシントトロイデンへ移籍し、そこから代表正守護神への道を歩み始めました。

「アジアカップの時はさすがに心配になったんで、『彩艶、大丈夫か』と連絡しました。『自分にできることは限られている。できることをやっていくしかないので頑張ります』と彼は言いましたけど、本当にその通り。自分がコントロールできないことに過度に敏感になってもしょうがないですから。もともと彩艶はメンタルコントロールがうまい選手だと思いますけど、さらに成熟した印象を受けた。あれを乗り越えて、2024年にパルマに行ってからは一段階飛躍したなと感じています」

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