「時代に挑んだ男」加納典明(49)猥褻図画販売容疑で逮捕、「取り調べで泣いたとかって、あんなの大嘘だよ」
「大陰唇は撮ったけど小陰唇は撮ってない」
加納「警察もそうだと思うし、いろんな出版社もジェラしたんじゃないかな。俺一人で80万部だからね。当時ね、竹書房の社長が『加納さん、お札刷ってるようなもんだよ』と喜んでたからね」
増田「著者の印税は1割ですが、出版者の利益は3割くらいといいます。とすると毎月2億円……。まさに1万円札を印刷してる感覚だったんでしょうね。『月刊THE TENMEI』でどんな写真を撮ってどれが問題になったんですか?」
加納「モロにはしてないんだけど、強烈に撮った写真があった。それはそれだけの効果があって、それだけ売れたんだけども」
増田「強烈にというとどの部分を」
加納「大陰唇は全部出してんですよ」
増田「ちょっとふっくらした部分ですね」
加納「その内側の粘膜の部分が小陰唇なんだけどそこは撮ってない」
増田「ピンクの部分ですね。そこは撮ってないと」
加納「撮ってない。撮ったのは大陰唇の正中線から外側まで」
増田「それでも猥褻図画販売容疑で逮捕されたんですね。いろいろな記事を読んでみると、社会的には大きなニュースだったけれども典明さんご本人はそんなに気にされていないようですが」
加納「逮捕のこと? うん、それほど気にしてないよ。経緯については少しあるけどね。あれは向こうが悔しがっただけの話ですよ。警察やら他の出版者やら世間やらが。だから、担当の刑事はそんなにシビアな話じゃなかったんですよ」
増田「取り調べでは『何が問題で、どこまでが問題なのか』みたいなやり取りがあったわけですよね?」
加納「一応はあったけど、別にそれは表面的な話で、刑事も本心では『そんなことどうでもいい』と思ってるんじゃないかと感じたね」
増田「当時どこかのメディアが『警察に謝罪した』とか『典明が泣いた』みたいに報じましたね」
加納「あんなの大嘘だよ。何で俺が泣かなきゃいけないんだよ(笑)」
(第50回につづく=火・木曜掲載)
▽かのう・てんめい:1942年、愛知県生まれ。19歳で上京し、広告写真家・杵島隆氏に師事する。その後、フリーの写真家として広告を中心に活躍。69年に開催した個展「FUCK」で一躍脚光を浴びる。グラビア撮影では過激ヌードの巨匠として名を馳せる一方、タレント活動やムツゴロウ王国への移住など写真家の枠を超えたパフォーマンスでも話題に。日宣美賞、APA賞、朝日広告賞、毎日広告賞など受賞多数。
▽ますだ・としなり:1965年、愛知県生まれ。小説家。北海道大学中退。中日新聞社時代の2006年「シャトゥーン ヒグマの森」でこのミステリーがすごい!大賞優秀賞を受賞してデビュー。12年「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」で大宅壮一賞と新潮ドキュメント賞をダブル受賞。3月に上梓した「警察官の心臓」(講談社)が発売中。現在、拓殖大学客員教授。