がんの疑いが浮上して…脳外科医のDr.まあやさん卵巣腫瘍を振り返る

公開日: 更新日:

術後はお腹の激痛に苦しめられた

 問題だったのは、硬膜外ブロック(脊髄を覆う硬膜の外側に投与する麻酔薬)のための針でした。私くらい太っていると背中にも脂肪が多いので、日本の一般的な針では硬膜外まで届きません。なので麻酔科の先生に事情を話し、海外から長い針を取り寄せてもらうこともお願いしました。

 手術前の検査で転移はなく、予定通り手術はできたのですが、術後の痛みに苦しめられました。私は腹部を縦にがっつり切ったほか、腹腔鏡手術のために穴を3カ所あけました。お腹を切るって、めちゃくちゃ痛いのです。腹筋は呼吸でも使うし、姿勢保持でも使います。海外から針を取り寄せてもらった硬膜外ブロック注射も、その他の痛み止めも全然効かないし、寝返りもできない。寝返りができないと腰が痛いから動かしたいけど、ちょっとでも動くとお腹に激痛です。

 脚についた血栓予防のポンプも鬱陶しく思え、指についたパルスオキシメーターも酸素マスクもすべてが嫌。耐えられなくなって、看護師さんに当たり散らしてしまいました。経験上、術後にすべて取り外して暴れる患者さんを見てきましたが、こういう状態だったのかと、今なら理解できます。朝方、全部外れたときは生きた心地がしました。

 でも、尿道カテーテルだけは術後2日間は取れませんでした。膀胱が刺激されるのか常に尿意がある不快感は想像以上。管が取れたときの解放感は言葉になりません。術後の患者さんの苦しみがとてもよくわかって、これからは「もっと優しくしよう」と誓いました。

 問題の「がんの疑い」があった卵巣腫瘍は、手術中に病理診断して良性とわかったので、腫瘍だけを切除して終わりました。術後の正式な診断でも良性だったので卵巣と子宮は今も健在です。

 事前に、「悪性だったら全摘だけれど、良性だったらどうする?」という話し合いをしていました。当時40歳だったので、子宮を取ることで起こるリスク(更年期障害の症状や骨粗しょう症)を考慮したのですが、今なら全部取ってもらうかな(笑)。

 常日頃、命と向き合う仕事です。だから健康をいかにキープするかを考えています。「痩せないとな~」とは思っていますけど、この体形の割にはみなさんが思うほど検査数値も悪くありません。でも、油断せずに健康第一で生きていこうとは思っていますよ。

(聞き手=松永詠美子)

▽どくたー・まあや 1975年、岩手県育ち。岩手医科大学医学部卒業後、慶応義塾大学外科学教室脳神経外科に入局。2010年からファッションデザインを学び、13年には「Dr.まあやデザイン研究所」を設立。現在、医師として釧路と神奈川の病院に勤務しながらデザイナーとしても活躍している。

■本コラム待望の書籍化!愉快な病人たち(講談社 税込み1540円)好評発売中!

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    秋季関東大会で横浜高と再戦浮上、27連勝を止めた「今春の1勝」は半年を経てどう作用するか

  2. 2

    「えげつないことも平気で…」“悪の帝国”ドジャースの驚愕すべき強さの秘密

  3. 3

    公明票消失で自民衆院「東京選挙区」が全滅危機…「萩生田だけは勘弁ならねぇ」の遺恨消えず

  4. 4

    星野監督時代は「陣形」が存在、いまでは考えられない乱闘の内幕

  5. 5

    「自維連立政権」爆誕へ吉村代表は前のめりも、早くも漂う崩壊の兆し…進次郎推しから“宗旨変え”

  1. 6

    ドジャース大谷翔平が直面する米国人の「差別的敵愾心」…米野球専門誌はMVPに選ばず

  2. 7

    国民民主党・玉木代表「維新連立入り」観測に焦りまくり…“男の嫉妬”が見苦しすぎる

  3. 8

    自民「聞いてないよォ」、国民・玉木氏「どうぞどうぞ」…首相指名の行方はダチョウ倶楽部のコント芸の様相

  4. 9

    号泣の渋野日向子に「スイングより、歩き方から見直せ!」スポーツサイエンスの第一人者が指摘

  5. 10

    「ガルベスと牛乳で仲直りしよう」…大豊泰昭さんの提案を断固拒否してそれっきり