著者のコラム一覧
青島周一勤務薬剤師/「薬剤師のジャーナルクラブ」共同主宰

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。

日本の医学者が発見した「オレキシン」研究が切り開いた新時代

公開日: 更新日:

 覚醒状態の維持に関わる体内物質に「オレキシン」(ヒポクレチンとも呼ばれます)を挙げることができます。オレキシンは、日本の医学者である櫻井武氏(筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構)によって1998年に発見された、神経に作用する体内物質です。

 発見当初、食事の摂取がない絶食状態でオレキシンの分泌が促されたことから、食欲のコントロールに関わっている物質だと考えられていました。ところが、オレキシンを産生する神経細胞が障害を受けると、覚醒状態を維持できなくなるナルコレプシーという病気を発症することが分かり、オレキシンが覚醒の維持に関わっていることが明らかにされました。ナルコレプシーとは、十分な睡眠にもかかわらず、日中に我慢できない眠気に襲われてしまう睡眠障害です。

 その後、オレキシンと不眠症のメカニズムに関心が集まるようになります。ベンゾジアゼピン系薬剤やZ-ドラッグは、脳の活動を抑えることで入眠を促しますが、覚醒状態を促すオレキシンの働きを抑えることでも入眠がもたらされると考えられたからです。

 2014年に、オレキシン受容体拮抗薬の「スボレキサント」(商品名:ベルソムラ)が世界で初めて発売されました。スボレキサントは、オレキシンが脳内受容体(オレキシン受容体)に結合するのを妨げることで、オレキシンの働きを弱めます。

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    立花孝志容疑者を"担ぎ出した"とやり玉に…中田敦彦、ホリエモン、太田光のスタンスと逃げ腰に批判殺到

  2. 2

    阪神・佐藤輝明にライバル球団は戦々恐々…甲子園でのGG初受賞にこれだけの価値

  3. 3

    FNS歌謡祭“アイドルフェス化”の是非…FRUITS ZIPPER、CANDY TUNE登場も「特別感」はナゼなくなった?

  4. 4

    阪神異例人事「和田元監督がヘッド就任」の舞台裏…藤川監督はコーチ陣に不満を募らせていた

  5. 5

    新米売れず、ささやかれる年末の米価暴落…コメ卸最大手トップが異例言及の波紋

  1. 6

    兵庫県・斎藤元彦知事らを待ち受ける検察審の壁…嫌疑不十分で不起訴も「一件落着」にはまだ早い

  2. 7

    カズレーザーは埼玉県立熊谷高校、二階堂ふみは都立八潮高校からそれぞれ同志社と慶応に進学

  3. 8

    日本の刑事裁判では被告人の尊厳が守られていない

  4. 9

    1試合で「勝利」と「セーブ」を同時達成 プロ野球でたった1度きり、永遠に破られない怪記録

  5. 10

    加速する「黒字リストラ」…早期・希望退職6年ぶり高水準、人手不足でも関係なし