画家の田中茂さん 医師に「運転中に失神したら大事故になる」と言われ39歳で心臓ペースメーカー手術を決断

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15年経ってペースメーカーを入れ替え

 30歳すぎた頃でしょうか、ホルター心電図の結果を見ると、夜中に心拍が時々止まる時間が長くなってきたんです。子供がまだ小さかったですし、主治医には「車の運転中に失神したら大事故になるよ」と言われ、39歳のときに心臓ペースメーカーを入れる手術を受けました。

 マッチ箱ほどの大きさの本体と、そこから延びるリード線で構成されていて、本体は肩と胸の間ぐらいに埋め込み、リード線は心臓の内側にねじ込まれています。

 入院は1週間ぐらいだったと思いますが、退院前に特殊な装置に体を固定されて、ペースメーカーの設定を調整しました。ペースメーカーは心拍が止まると感知して電気刺激を送る装置です。その強さや感度は外側から調節できるのです。どのくらいに設定したらいいのか、どこまでやったらやりすぎなのかなどを“実験”したのです。ペースメーカーは今でも定期的に受診して状態を点検しています。おかげさまで、退院してからは一度も失神していません。

 埋め込みから15年経った昨年3月には本体を入れ替えました。電池の残量やバッテリーの圧力などが低下してくるので、状況に合わせて入れ替えるもののようです。私の電池は長く持った方だと聞いています。電気刺激を送る回数が少なければ電池の減りも少ないわけですから、私の心臓は割と自力で頑張っているのだと思います。

「電池がだいぶ減っているので2週間後に交換の手術をしましょう」と言われたのは2月上旬でした。でも、下旬にはパリでの美術展が決まっていたので、3月上旬に手術をしていただきました。本来、3月は先生方の都合で無理だったのですが、私がどうしてもパリ行きを譲らず、4月ではさすがに電池切れしそうだったので、先生方が折れて、スケジュールや手術室の空きを調整してくださいました。

 最初はいろいろ気になりましたが、今となってはぺースメーカーが入っていることはほぼ忘れて生活しています。気を付けているのは疲れないようにすることかな。でも、1~2年前にニューヨークの美術展に出展したとき、現地でコロナウイルスに感染して大変でした。米国は保険が利かないから、なんだかんだ70万円ぐらいかかりました(笑)。

 今は、ペンキ屋の現場は職人に任せて、自分は営業と現場管理をしています。画家として絵を描くのは夕食後から深夜1時ごろまで。でも全然、苦になりません。これは天命だと思っています。コロナ禍に見つけた絵画は、残りの人生の旅のよう。戦争や災害、世の中には痛いことが本当に多い。痛いことはいっぱいされてきたのでもういらないです。僕だけは温かいものを残して逝けたら幸せです。 

(聞き手=松永詠美子)

▽田中茂(たなか・しげる) 1970年、岐阜県生まれ。12歳で油絵を学ぶが、高校卒業後は家業を継ぎ、建築塗装職人となる。一方で劇団に所属してミュージカルに出演したり、舞台の背景画を担当した経験を持つ。ブランクを経てコロナ禍の2021年に絵画を再開。羽島市美術展で大賞を受賞したのをきっかけに精力的に作品を制作し、国内外で評価される。24年にはスペイン、マドリードで個展を開催した。

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