「首から下が動かない…死を覚悟しました」滝川英治さん頸椎損傷との闘い

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自分の足で立ち上がる…まだあきらめていない

 現在は東京で1人暮らし。とはいえ、胸から下は1ミリも動かすことができず、感覚もないので、たとえばどこか刺されても痛くもかゆくもありません。朝、昼、晩とヘルパーさんに来てもらって食事や身の回りのことをしてもらっていますし、寝返りが打てないので就寝介助の方にも来てもらっています。

 退院が決まった当時、医師は「そんな状態で1人暮らしする人はいない」と言うし、母親も「大阪の実家に帰ってくればいい」と言いました。でも、自分は東京で1人暮らしをしたかった。父親にそう言うと、「わかった。その代わり二度と帰ってくるな」と言われました。それは「男だったら生き抜いてみろ」というメッセージだと受け取って今を生きています。

 絵を描き始めたのは暇だったからです。毎日、天井を見ていたら、天井のシミが3匹の犬に見えて、いつしか毎日3匹の犬の物語を考えるようになりました。起き上がれるようになったら口にペンをくわえ、タブレットでストーリーを書き出して、日常的に絵を描くようになりました。それが功を奏し、ここ数年は絵本を出したり、個展を開いたりしています。

 先日、SDGsのイベントに参加させてもらったとき、自分のような障害を見たことがない子供たちがとても興味を示してくれました。子供たちを対象に口にペンをくわえて絵を描いてもらうと、「難しい」と言いながらも、とても楽しそうな笑顔を見せていたのが印象的でした。

 難しいことに挑戦すると失敗もあるし、つらく苦しいときもあるけれど、それを乗り越えられたらすっごく気持ちいい瞬間があるのだと子供たちには伝えたい。それは健常者も障害者も関係ないことだと思います。途中であきらめるのもひとつの正解だと思うけれど、さらに一歩踏み出すとまた違う世界が見えてくる。

 ケガから8年ですが、「自分の足で立ち上がるのだ」という目標を見失わないことを大事にしています。まだあきらめていないし、やりたいことがあるし、可能性を信じて挑戦していきます。70歳、80歳になっても「俺は歩くから」と言っていると思います。その先の最高に気持ちいい瞬間を手に入れようと思っているので、今のつらさ、苦しさは屁でもないですよ(笑)。

 (聞き手=松永詠美子)

▽滝川英治(たきがわ・えいじ) 1979年、大阪府生まれ。18歳で芸能界入りし、2002年から5年間、ケイン・コスギとともに大正製薬「リポビタンD」のCMに出演。テレビや舞台で活躍した。17年、撮影中に自転車のシーンで転倒して胸から下が動かない状態に。著書にエッセー「歩-僕の足はありますか?」、絵本「ボッチャの大きなりんごの木」がある。21年、東京パラリンピック開会式では空港の管制塔クルー役で出演した。

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