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田丸昇
著者のコラム一覧
田丸昇

1950年5月5日、長野県東御市生まれ。元日本将棋連盟理事。中学生で奨励会入りし、佐瀬勇次名誉九段の門下生となる。長髪から「ライオン丸」というニックネームで知られた。16年10月に現役引退。近著に「名棋士の対局に学ぶ 詰め&必死」(創元社)がある。

中原誠や米長邦雄が繰り出した奇想天外「ヒフミン対策」

 私は少年時代、加藤一二三・九段(77)の対局で記録係を何回も務めたことがある。

 20代、30代のころの加藤は寡黙で近寄りがたい印象があった。対局では不動の姿勢で盤面に没入し、序盤から最善手を求めて長考を重ねた。そのために持ち時間を中盤で使い切り、早々に1手60秒の秒読みになることがよくあった。自身をわざと苦境に追い込むような姿は修行僧に見えた。

 加藤は対局での旺盛な食欲が何かと話題になっている。しかし、昔は少食だった気がする。ラーメンをよく注文したのは好物というよりも、対局中は余計なことを考えたくなかったからだと思う。

 加藤九段はある時期から、対局中の言動に変化が起きた。

 対局前に将棋盤の位置を勝手に動かす。相手の対局者の背後に回って盤を見る(ヒフミンアイとも言う)。咳払いをやたらに発する。ベルトをつかんで上体を伸ばす。食事とおやつを食べまくる。席を立って賛美歌を口ずさむ。「ウヒョー」と奇声をあげる。秒読みの最中に記録係に「あと何分?」を連発する。タイトル戦の対局場で水の流れる音が気になると人工の滝を止めさせる。

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