数字の裏にカラクリあり 有効求人倍率「1.52倍」の実態
「43年ぶりの高水準」――。こんな威勢のいい言葉が躍っている。
厚労省が7月の有効求人倍率が1.52倍だったと発表した。1974年2月以来、43年5カ月ぶりの高水準だ。有効求人倍率は仕事を求めている人ひとりに対し、企業から何人の求人があるかを示す数字。倍率が高いほど仕事がたくさんあることになり、1.52倍はまことにけっこうだが、そこには裏がある。立教大教授の郭洋春氏(経済学)が言う。
「有効求人倍率は正社員だけではないのです。パートや期間工、派遣社員も含まれます。その実態は、コンビニや飲食業界は人手が足りず、銀行やIT企業は希望者が多すぎて仕事が足りないという、いびつな構成になっています。実際、今年の銀行の新卒採用は昨年より減少しました」
要するにネクタイとスーツに身を包んだホワイトカラーは採用が極端に少ないのだ。人事コンサルタントの菅野宏三氏が言う。
「今年1月の外食サービス業は求人1480人に対して応募者が542人とかなりの売り手市場でした。この現象は小売業や建設業などでも顕著。ただし、その多くはホワイトカラーではない。外食業界からは“大卒なのに焼き鳥の串を刺す仕事しか与えられない”といった悲鳴が聞かれます。一方、経理や営業などの一般事務職は求人がゼロに近いのです」