イギリスの監視カメラは600万台 市民は1日300回撮影される
「不正防止のため、監視する側を監視する人が必要だ。じゃあ、その監視する人を監視する人は誰が監視するの?」
日本でも人気の高いウィル・スミスの主演映画「エネミー・オブ・アメリカ」(98年)で、こんなやりとりが出てくる。公的機関による無節操な盗聴・盗撮の怖さを描いたものだが、すでに我々はどこへ行っても監視カメラに“見られている”状況だ。
■北アイルランド紛争の苦い経験
国民1人当たりの台数で世界最多とされる「監視大国イギリス」。現在、推定600万台の監視カメラが存在し、3分の1の200万台がロンドンにある。観光で訪れれば、セント・ポール大聖堂やビッグ・ベンの脇に設置された監視カメラに気付くはずだ。
「英国の都市で市民が1日にカメラで撮影される回数は、平均300回とされます。英国は北アイルランド紛争(98年和平合意)のテロで多数の犠牲者を出した苦い経験があり、さらに93年の幼児殺害のジェームズ・バルジャー事件において、犯人特定に監視カメラ映像が寄与したことで、台数が増えていきました。05年のロンドン同時爆破テロでは、実行犯の特定にカメラ画像を役立てています」(国際社会経済研究所主幹研究員・小泉雄介氏)