ALiNKインターネット池田洋人社長 二元論で読書する

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 自転車やエレキギターが無造作に置かれたオフィス。応接室は透明なガラス張り。同社は日本気象協会と天気情報サービス「tenki.jp」を共同運営する会社だ。もっか春の甲子園大会が熱戦を繰り広げているが、社長の池田洋人さん(44)も埼玉県の古豪でセカンドを守っていた元高校球児だ。

  ◇  ◇  ◇

 池田さんがまず手にしたのは、宮崎駿の漫画「風の谷のナウシカ」(1~7巻)。映画版はアニメの金字塔と呼ばれ、老若男女に親しまれているといっていい。

「核戦争を想起させる『火の7日間』と呼ばれる最終戦争から1000年後、主人公のナウシカが王蟲の群れの中から蘇るシーンで映画は終わります。いわば、ハッピーエンドです。しかし、ここまでの話はコミック版の2巻、もっと言えば2巻の途中までです。コミック版はこの後、映画とは異なる壮大なテーマが展開し、『絶望と希望』『科学と自然』『清浄と汚濁』といった二元論的な世界観が語られています。二元論とは、相反する2つの要素から理解することですが、世の中はこの相対する事柄を、いかにバランスを取るかで成り立っていると思います」

 池田さんは気象予報士の資格も持つ。その池田さんの解釈では、養老孟司の「バカの壁」や太宰治の「人間失格」も同じく二元論的な考え方で読めるという。異なった考え方とどう折り合うかというものだ。

 大学卒業時は就職の“氷河期”。特に気象に興味があったわけではないが、民間の気象情報会社に就職した。

「仕事は営業職で、夜9時ごろに帰宅して夜中の1時、2時まで勉強する生活を2年続けました。理数系が得意だったわけでもなく、気象予報士を目指して勉強し、そこで初めて『微分積分や三角関数のsin(サイン)、cos(コサイン)は、こんな時に使うのか』と知ったほどです」

■ヤフー時代はYahoo!天気をリニューアル

 その後、池田さんは天気予報の重要性に気付き、2003年にヤフージャパンに転職する。

「天気予報というのは、現代社会に密接につながっていながら、ヤフーでさえも当時はニュースの一部門という扱いでした。そこで当時のヤフーの井上(雅博)社長に『天気予報は災害情報にも関わってくるので充実させたい』と訴えました。利用者の利便性を考え、ビジュアルにこだわり、地図からその地方の天気がチェックできたり、雲の動きも動画で見られるようにしたものです」

 現在の我々がスマホやパソコンでよく見ている天気予報の原型をつくったわけだ。

 だが、ここで池田さんはひとつの後悔を口にする。

「東日本大震災時、アクセスが集中し弊社が共同運営する『tenki.jp』のサイトがダウンしてしまいました。するとアクセスが『Yahoo!天気』に向かい、ヤフーもダウン。気象庁のHPもダウンした。ようやく我々が復旧すると、再びアクセスが集中し……というループです。命に関わる状況下で情報が途切れてしまうのは、メディアとしての使命を果たしていない。今は技術的に解決していますが、責任を痛感しています」

■降水確率0%はレイパーセントと読む

 そんな池田さんだが「ずっと受けたかったお天気の授業 」「たのしく学ぼう お天気の学校12ヶ月」など、数冊の書籍を出版している。

「気象に関する書籍というのは、どうしても難解になりがち。そこで、小学生にも興味を持ってもらおうとイラスト付きで本を書いてみました。例えば『降水確率0%』はゼロではなく、レイと読みます。ゼロはまさしく無ですが、レイは零細企業などがあるように“極めて小さい”という意味。したがって降水確率0%は、0~5%の確率ということになるのです。昨今の地球温暖化問題で、私が尊敬するウルグアイのホセ・ムヒカ前大統領は『環境危機は政治危機の問題』と発言しました。互いに自国の利害を主張してばかりでは物事は進みません。地球の環境も相反する意見とどう折り合うかが大切です」

 降水確率0%で雨が降ると怒っていたが、5%未満のことだと知れば、少し納得できる。

 (取材・文=加藤広栄/日刊ゲンダイ)

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